日本で増税はなぜ嫌われるのか? ~日本と海外の社会保障比較~
日本ほど増税に厳しい国はない
日本では、消費税をアップするという話題が出るたびに、国民の大きな反発が起こります。しかし各国の税負担率を調べてみると、日本の国民の税負担率は、欧米各国に比べて軽いほうです。それにもかかわらず、日本人は税が嫌いで、増税に反対します。一方、北欧の国々は税負担が重いのですが、国民の税負担に対する意識は日本と同じかむしろ軽いくらいです。
「守られている」と感じる北欧の国民
スウェーデンを例にとると、国民の税負担はかなり重いですが、徴収された税がきちんと国民一人ひとりの福祉のために使われているという実感があり、「自分に何か問題が起こっても、国が守ってくれる」という安心感を、国民は持っています。税金で安心感を買っていると考えてもいいでしょう。
一方、日本の場合は、税金によって自分が支えられている、という実感があまりありません。高齢者や生活困窮者などへの福祉は手厚いイメージがありますが、その分、ほかの多数の国民は、自分たちは恩恵を受けていないという不公平感を持っているのです。
日本が進むべき道は
福祉財政のあり方は、国によって異なります。北欧は、「お金持ちも困っている人も公平に支える」という財政のコンセプトがあり、日本やアメリカは、「自分ではどうにもならない人を優先的に支える」というコンセプトがあります。
しかし日本は財政が危機的状況にあるため、社会保障制度が繰り返し見直され、そのたびに予算が削減されてきました。医療や介護サービスの自己負担率は、2000年以降段階的に引き上げられ、2013年以降には生活保護の受給基準が厳しくなり、受給できる人が少なくなりました。これでは、「自分のことは自分で面倒を見るべきだ」という自己責任論を押しつけ、それができない人たちを非難するという、社会の分断に拍車をかける可能性があります。
この状況を変えるには、安心感を得られる福祉政策を実現するための制度設計を考えていく必要があるのです。
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埼玉大学 経済学部 経済学科 准教授 高端 正幸 先生
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