人の心にスポットを当てる「行動経済学」
実生活と行動経済学との関わり
近年注目されている行動経済学は、個人の行動や心理にスポットを当てた学問です。あなたが何気なくしている行動が実は経済とつながっているのです。例えば、「ダイエットを決意したけど、やっぱり明日からにしよう」「働きたくないから、とりあえず大学に進学しよう」といった「嫌なことは先送り」の心理も、景気の動きなどと密接に関わっています。
従来の理論と行動経済学との違い
行動経済学の実験でよく扱われる題材に、お金の山分け問題があります。「AとBの2人がいる。Aに1万円が渡され、Bに対して分け前を提案する権利が与えられる。合意に至ればそれぞれ取り決めた金額をもらえるが、Bが拒否すれば2人とももらえない」とします。
それぞれの取り分はどうなるでしょうか。従来の経済学の理論ではAが9,999円、Bが1円になると考えます。なぜなら、従来の経済学は「人間は常に自分が少しでもトクになるように行動する」ことを前提としているからです。「Aはできる限り多く(9,999円)を取れる提案をする。BはAの提案を拒否して一切もらえないよりも1円でもお金を得られるから、その提案を受け入れる」と考えるのです。しかし、実際に人を対象として実験を行うと、AはBとの関係性を考慮して4,000~6,000円しか取らず、全く違う結果になることがわかっています。行動経済学ではこのような実際の人間の行動を観察し、より現実に近い理論を導き出すことに重きを置くのです。
行動経済学の対象はより広いフィールドへ
もともとは個人にスポットを当てていた行動経済学ですが、知見が深まるにつれてそのフィールドは広がってきています。行動経済学を生かした学問として「行動ファイナンス」という分野がありますが、これは個人を超えて金融というより大きなお金の流れを対象としたものです。この先はさらに広く応用され、財政政策も人の行動心理を取り込んで実施されるようになっていくと予想されています。
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先生情報 / 大学情報
桃山学院大学 経済学部 経済学科 教授 中村 勝之 先生
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