世の中をスムーズに動かす「仕掛け」のチカラ

世の中をスムーズに動かす「仕掛け」のチカラ

人々の言動には因果関係がある

人はどうして日々いろいろな言動をするのでしょうか。人々の言動や社会現象の背後には、何かしらの因果関係が存在すると推測されます。その因果関係を明らかにする手段のひとつに、認知的アプローチがあります。この世界には、見えているはずなのに見ていない、聞こえているはずなのに聞いていないことがたくさん存在し、実はそれらが人々の行動に大きな影響を及ぼしています。ちょっとした「仕掛け」によって、それらへの気づきを促すことができます。つまり、人々にしてもらいたい行動があるのになかなかしてもらえない場合、ある「仕掛け」をすることで、スムーズに行動してくれるようになるのです。

公共の場における「仕掛け」の効果

このような「仕掛け」を活用した事例は世界中で見られます。オランダのスキポール空港では、男性用の小便器に小さなハエを描くことによって人々がそこに狙いを定めるようになり、結果として尿の飛散が大幅に減少し、莫大な清掃コストを削減することができました。また、ペットボトル回収ボックスにキャップ用の小さな穴を別に設けることで、みんながキャップを外してボックスに入れるようになり、分別回収が容易になったと同時にボトルを簡単に圧縮できるようになったため、回収効率が非常に上がりました。

マーケティングにも有効な「仕掛け」

また、認知的な偏りを仕掛けに応用することもできます。例えば、メニューに表示する情報(例えばカロリーや塩分量)や陳列棚での料理の配置によって選ばれる料理を変えることもできます。さまざまな「仕掛け」をうまく応用すれば、公共の空間での行動を促すだけでなく、スーパーやコンビニなどで商品をどう訴求すれば効率よく買ってもらえるのかといった販売促進や、マーケティングにも役立ちます。「仕掛け」のメカニズムを解き明かして活用すれば、大いなる可能性が広がるのです。

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大阪大学 経済学部 経済・経営学科 教授 松村 真宏 先生

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仕掛学

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メッセージ

私が大切にしているいくつかの座右の銘の一つに「fail fast(早く失敗しよう)」があります。失敗を恐れず、悩んでいる暇があれば行動しよう、前に進もう、というメッセージです。日本にも「失敗は成功のもと」という言葉がありますが、まさに失敗するからこそ改良や改善につながり、結果として成功につながっていくと思います。私が取り組んでいる「仕掛学」は、自分の体験に基づいて発想できる学問です。新しいイノベーションを生み出すためにも、失敗を恐れずいろいろなことに挑戦してみてください。

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。