クラブ活動のルーツは産業革命にあり
新しい時代の幕が開くとき
中世ヨーロッパでは、一握りの人々が土地を支配し、農民の多くはさまざまな束縛を受け、経済的な負担を強いられていました。しかし、18世紀から19世紀にかけてその様相がガラリと変わります。「産業革命」の到来です。農業中心の社会から工業中心の社会へと移り変わり、資本主義経済が発展しました。資本主義の基本は、「自由」です。誰でも、好きな職業に就いたり、新たに商売を始めるチャンスが訪れたのです。このように、それまで当たり前のようにあったものが大きく変化したり、なくなったりすることがあります。変化するとこれまでのやり方では解決できない問題もたくさん出てきます。そのようなとき、人がよりどころにするものが信頼や絆です。
信頼や絆を形に
産業革命の起きたイギリスを中心に、世界的に急増し、変革を後押ししたのが「クラブ」でした。
クラブとは、人々が目的をもって集い、規約を作り、その規約に基づいて運営していく組織のことで、言わば信頼や絆を形にしたものです。産業革命期には、政治や経済を語り合うクラブのほか、スポーツや芸術、科学など、共通の趣味・志向を持つ仲間の集まりが数多く誕生し、新しい社会の仕組みや価値観などについて活発に議論する場として機能していました。さらに、ひとりで複数のクラブに所属することが普通だったため、人と人との絆が、さまざまな枠を超えて張り巡らされ、新しい時代に対応するものの考え方や、多数の意見をまとめるノウハウなどを蓄積していったのです。
歴史から見えてくるもの
人が集まると一見いいことばかりのように思えます。困ったときに助け合ったり、個人の力では難しい大きな問題を協力して解決したりなどメリットがある一方、クラブの歴史をひもとくと、人を排除したり純粋な志を見失ったりと、ネガティブな側面も見えてきます。個人や地域の繋がりが薄れつつあると言われる現代社会において、どうすれば人と人とがうまく結び付いていけるのか、信頼や絆の探究は続きます。
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