カタチだけではない 建築設計で大切なこと

デザインとスタイリング
デザインとスタイリングの違いは何だと思いますか? 傘を例に考えてみましょう。
傘を選ぶとき、多くの人がポイントにするのは、幕部分の色や柄、持ち手の素材や形など、見た目の印象です。これらは「スタイリング」にあたる部分です。一方で、傘の本来の目的は、雨を防ぐことです。その目的を果たすために、水をはじく素材を使用し、人が一人入るくらいの大きさで、片手で持てる重さになるよう考えて設計されています。これが「デザイン」にあたる部分です。
このように、ものづくりには、課題を解決するために設計する「デザイン」と、見た目や印象を整える「スタイリング」の両方が必要なのです。
出発点は課題を見つけること
建物を作るときも同様です。建築設計では、周りの環境や、その建物の使用目的などを考えながら、まず課題を見つけること(=観察)からスタートします。例えば郊外型のカフェを設計する場合、せっかく広い敷地と緑豊かな環境があるのに、そこに閉鎖的な建物を作るとしたらもったいないことです。そこで、「建物内にいても外とのつながりが感じられる空間にすること」を課題として設定します。そして、それを解決するにはどうしたらいいかを考えて、設計します。これが「デザイン」です。
さらに、カフェを訪れた人が心地よく、楽しく過ごせるように、壁や床の素材・色・仕上げ、さらにはテーブルやイスの形・質感にもこだわって選定していきます。これが「スタイリング」です。
当たり前を疑うことから始まる創造
建築は自己表現を目的とした「アート」ではなく、課題を解決して、多くの人に共感してもらうことに意義があります。そこへ、想像を超えるような体験をもたらす「意外性」を加えることで、その建物はより魅力的なものになります。格好の良い建物を生み出すセンスも大切ですが、誰もが当たり前と思っていることに疑問を投げかけて、より良い形を提案することが、真に喜ばれる建築設計の実現につながるのです。
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先生情報 / 大学情報

愛知産業大学造形学部 建築学科 准教授寺嶋 利治 先生
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建築設計学、インテリアデザイン論先生が目指すSDGs
先生への質問
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