世の中の「当たり前」を変えるデザインとは
デザインには当たり前を変える力がある
「デザイン」とはなんでしょう。グラフィックデザインやプロダクトデザインなどをイメージする人も多いと思いますが、これらはどう表現するかの手段です。デザインとは、「当たり前」と思われていることに、今までと異なる視点から光をあてて、新たな可能性を見つけることです。私たちは、いろいろなことを「当たり前」として過ごしています。そこに別の視点を加えると、「あれ?」と疑問が湧き、新しい可能性が見えてきます。それを具体的な形にするのがデザインともいえます。
自然に楽しみながら役立つものを
実例を紹介しましょう。災害時の避難所には、たくさんの備蓄品がダンボールに入れられて保管されています。使用後は捨てられるこの段ボール箱を使ったスツール(イス)が考案されました。避難時の情況を考え、ハサミなどの道具を使わず、子どもたちがおもちゃ感覚で楽しみながら作ることができます。できあがったスツールは丈夫なため複数個を組み合わせるとテーブルやベッドにもなります。
また、ある病院の子どもの遊び場は、感染予防のためにおもちゃを置けませんでした。そこで、静かに楽しく過ごせるように活用されたのが、プロジェクションマッピングです。イスにじっと静かに座っているとカニがどっさり集まる仕掛けです。さらに、ゾウと人間、ネズミの心音を聴ける壁も設置され、耳を澄ませて楽しむスペースになりました。単調になりがちな病院のリハビリでは、手の動きの訓練にオセロゲーム、足腰の訓練に草取りの動作を取り入れ、自然に楽しく続けられるよう工夫しています。これらはすべてデザインなのです。
意味のある情報の収集が不可欠
このように、目的や情況に合わせてより良い環境を実現するには、現場の観察とそこで得られた情報が不可欠です。情報は単にあるものではありません。誰に対してどんな意味があり、何が必要かといったその文脈に沿った情報をしっかりキャッチしたうえでデザインを施すと、より良い社会づくりにつながるのです。
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専修大学 ネットワーク情報学部 ネットワーク情報学科 准教授 栗芝 正臣 先生
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