検査を通して「脳」の働きを探る 認知症診療を支える言語聴覚士
言語聴覚士が担うリハビリテーション
言語聴覚士は、理学療法士や作業療法士と同じく、リハビリテーションの専門職です。「話す」「聞く」や「食べる」といった、人間の首から上の部分のリハビリテーションを担っています。脳に損傷を受けて口やのどの筋肉がまひしてしまい、話すことや食べることが難しくなる、あるいは生まれながらにして耳が聞こえない、言葉がうまく話せないケースなど、乳幼児から高齢者までの、さまざまな障がいに対応します。また、脳に損傷を受けた人に対して、「記憶する」「何かに注意を向ける」「見たものを認識する」といった脳の働き、認知機能を調べる検査なども行っています。
さまざまな方法で認知症の原因を探る
例えば、認知症の検査があります。言語聴覚士は患者さんに対して、1.記憶力の低下など頭の働きの状態、2.服の着替えや入浴、排せつ、料理など生活における障がいや程度、3.不安な気持ちや事実ではないことを信じ込むといった気分・感情・行動面の状態について、さまざまな方法で検査します。患者さんの家族への聞き取り調査も行います。こうして得た情報をもとに、医師が認知症の原因となっている病気を総合的に診断します。言語聴覚士は、認知症の診療においても欠かせない存在なのです。
進む高齢化で高まるニーズ
現在、認知症に根本的な治療法はありませんが、患者さんの症状や進行度合に合わせて、落ち着いて過ごせる場所や環境、時間をつくることはできます。また、不安感や抑うつなどの症状がある患者さんには薬を処方するなど、検査で患者さんの状態を詳しく探ることは、最適な治療法の選択につながります。加えて、患者さんの家族に今後起こると予想される症状や気をつけた方がよい事柄について助言もできるようになります。
日本では、2025年に65歳以上の高齢者が5人に1人の割合で認知症になると予測されています。それに対して言語聴覚士は、2020年3月時点で約3万4000人です。高齢化が進み、言語聴覚士のニーズは高まる一方です。
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先生情報 / 大学情報
新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科 講師 内山 信 先生
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