「目で見る」ことで初めて「聴こえる」、音楽の本来の姿
「耳で聴く」だけではわからない音楽の価値
普段の生活の中で音楽を聴くとき、スマートフォンやイヤフォンを使って音源を聴いたり、あるいはステレオなどで再生したりする場合が多いでしょう。しかし、本当の意味で音楽を味わって、その価値を理解するには、耳で聴くだけでは十分ではありません。音楽は、「目で見る」ことによって初めて、本来の姿を理解することができるのです。
8割以上の情報は目で感知されている
人間は、外界から得られる情報のうち、83パーセントを視覚で、11パーセントを聴覚で感知していると言われています。同じ音楽を聴く場合でも、音だけに耳を澄ますより、音楽家の演奏する映像を目で見ながら音楽を聴く方が、より豊かな形で音楽を受け止め、細やかな部分まで理解できるようになります。コンサートやライブの会場に足を運んで生の演奏を聴くと、会場の臨場感やほかの観客と共有する一体感など、五感のすべてを使って感じ取れるので、その演奏によって得られる感動は、さらに深く、大きくなります。
また、楽譜を眺めながら音楽を鑑賞するのも、音楽の理解を深めるのに良い方法です。楽譜を一種のグラフィックのように眺めて抑揚やリズムをイメージしていくと、作曲者の意図や、その楽曲の構造や全体像を把握しやすくなります。
鑑賞から表現へ、表現から鑑賞へ
1877年にレコードが発明される以前、人間が音楽を鑑賞する方法は「生」の演奏を聴くことだけでした。音だけを聴いて鑑賞するようになってから、まだ150年も経っていません。音楽鑑賞についての教育を行う際には、ライブ映像など「目で見る」ことのできる素材を用意し、視覚と聴覚の両方で味わう本来の姿に近い音楽鑑賞を体験できるようにすることが重要です。そうして豊かな音楽鑑賞の体験を得られた人が、次に演奏や教育する側に回ったら、より豊かな音楽表現へと結びつくのです。鑑賞から表現へ、表現から鑑賞へと、さらなる好循環が生まれることになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 芸術学部 音楽学科 教授 野本 由紀夫 先生
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