「楽譜どおり」だけじゃない、誰もができる「自分らしい音楽」
子どもたちは遊びの中で音楽をつくっている
例えば、幼稚園などで楽器を持って子どもたちが遊んでいる場面を見ているとします。しばらく観察していると、子どもたちはただ自由に鳴らしているのではなく、繰り返し音を出す中で、意図して誰かと応答しながら音楽をつくっていることに気づきます。子どもたちはいろいろな音楽や音に触れてインプットしつつ、それを基に即興的な表現でアウトプットしているのです。幼児の即興表現をテーマにした研究では、そういった音楽表現をすべて記録し、楽譜にして分析するといったことを行います。
まずは保育者が気づくこと
子どもたちが即興でつくり上げる音楽はとても素朴なので、誰にも気づかれず、見過ごしてしまうことがあります。保育者はそうした子どもたちの素朴な表現を、読み取り、受け止めることによって、子どもの自由な表現を支えていきます。こうした子どもの素朴な表現を支えるひとつの手段として、保育者は音楽の仕組みを理解していることが大切です。保育者自身が、例え楽器演奏が苦手でも、歌ったり身近なモノを用いてリズムで表現することが、子どもたちのクリエイティブな音楽活動を援助することにつながります。
いつでも、どこでも、誰もができる音楽表現
「楽譜どおりの音楽」となると、どうしても「できない」と劣等感を抱く子どもが出てしまいます。しかし本来、音楽は自由で楽しいものです。その子に合った音楽表現のあり方、楽しみ方があっていいという観点から、研究は「インクルーシブな表現教育」、つまり「誰もができる音楽表現とは何なのか」というところに広がっています。特別支援学校で、アフリカの「ジャンベ」という太鼓を使って持続するリズムをずっと繰り返してみると、子どもたちは生き生きとリズムに乗って自由に歌ったり音を鳴らしたりしながら一緒に楽しむことができました。即興というと、身構えてしまい表現することが「恥ずかしい」と思うかもしれませんが、やってみると簡単で楽しく、「音楽って誰でもできる」ことを実感できるものなのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 教育学部 学校教員養成課程 准教授 駒 久美子 先生
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