患者さんの「物語」を聞くことが看護になる
リハビリの語源は「復権」
脳卒中は、脳の血管が破れたり、詰まったりすることで、脳の神経細胞が障害される病気の総称です。発症すると、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ることも少なくありません。そのような後遺症を持つ患者さんが生きがいを再発見して、元気を取り戻すために行うのが「リハビリテーション」です。リハビリテーションの語源はラテン語の「復権」です。宗教から破門された人が破門を解かれて戻るという意味があり、現代では患者さんが社会復帰するための取り組みです。
看護師が患者さんと面接する?
脳卒中に対する患者さんのイメージやとらえ方は、人生経験や考え方などによってさまざまです。「治らない病気だからリハビリは頑張らない」「家族にやさしくしなかったから病気になった」など、それぞれに「脳卒中の物語」があり、そのために回復とは違う方向へいったり、さらに苦しみを抱えたりします。そこで看護師が患者さんと面接をして、その人の思いや考え方を聞き、辛さを共有したり、行動を理解したりすることが推奨されています。身体面だけでなく、精神や心理状態、社会的立場などの多側面から患者さんを把握して治療方法を考える医療「語りや対話に基づく医療(ナラティブ・ベイスド・メディスン)」です。
「物語」を聞くことが看護になる
具体的には、今、患者さん本人にとって大切なものを5つ挙げてもらい、それぞれの満足度を円グラフに示してもらいます。そのように語ることによって、患者さんにとって大切なものの意味づけが変わってきます。意味づけができると、いろいろな出来事が了解できて、病気や後遺症という事実を受け入れられ、リハビリにも積極的になれるのです。
また医療者側も、患者さんの考えや行動を理解し、具体的な支援方法を発見できます。趣味が大事なら、どうしたらそれができるようになるか。お酒が好きなら、どの種類をどの位なら飲んでもいいかなどを一緒に考えられます。患者さんの病気という物語、人生という大きな物語を聞くことが、看護になるのです。
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東北福祉大学 健康科学部 保健看護学科 教授 中村 令子 先生
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