コンピュータも計算を間違う? 精度保証付き数値計算の必要性
コンピュータも完璧ではない
今や私たちの生活に欠かせないコンピュータですが、厳密な話をすると、実はコンピュータも計算を間違えます。例えば、コンピュータは有限の存在なので、無限に続く円周率を完璧な形で取り扱うことはできません。どこかで値を区切っているわけです。正確無比なイメージのあるコンピュータも、極めて小さな誤差の範囲ですが、ズレた答を出しているのです。
微小な誤差も積もれば山となる
コンピュータは「0.1」という値も正しく表現できません。コンピュータは10進数でなく2進数で動いており、2進数で「0.1」を表すと無限に続く小数になってしまいます。そのため、約16桁までを採用してその先は四捨五入されているのです。スーパーコンピュータによる会話時の飛沫の飛散シミュレーションなどは、何千億回という膨大な回数の計算から導き出されます。1回1回の計算時も数値の約16桁より先を四捨五入しているため、誤差が生じます。1回の誤差は微小なものですが、計算が何度も繰り返されれば誤差もそれだけ大きくなります。この誤差により、アメリカは敵国からのミサイルの迎撃に失敗して甚大な被害を被った過去があります。こうしたコンピュータの計算時の誤差を防ぐため生み出された手法が「精度保証付き数値計算」です。
いつかは完璧な天気予報が実現?
精度保証付き数値計算では、例えば「0.1」のようなコンピュータで正しく表現できない数を、コンピュータで正しく表現できる数「0」と「0.5」などで挟み込んで取り扱います。こうすることで正しい答を含んだ計算ができるようになります。精度保証付き数値計算はまだ歴史の浅い分野で、ようやく基礎研究が終わった段階の学問です。流体の運動を記述する「ナビエ–ストークス方程式」に精度保証付き数値計算を適用することができれば、精度100%の天気予報の実現も夢ではありません。あらゆるシミュレーションに対して精度保証付き数値計算が適用されるようになれば、私たちの生活はもっと便利で快適なものになるでしょう。
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帝京平成大学 人文社会学部 経営学科 経営情報コース 講師 森倉 悠介 先生
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