道路に島をつくると安全で快適になる! 「二段階横断」の効果とは

道路に島をつくると安全で快適になる! 「二段階横断」の効果とは

歩行者の事故が多い日本

交通事故で亡くなる人の中で、歩行者の割合が高いのが日本の特徴です。ヨーロッパでは20%前後ですが、日本は35%程度です。特に道路横断中、左側から来る車にはねられるケースが多いという統計があります。車が右から来る手前側の道路は渡るタイミングをつかみやすいのに対し、奥の方は、左からの車の速度を読み違えて渡り始めてしまい、ぶつかるという実態があるのです

横断しやすく、車もゆっくり

ヨーロッパでは「二段階横断」が広く使われています。二段階横断は、道路を一気に渡るのではなく、真ん中に「交通島」というスペースを設けて2回に分けて渡る仕組みです。信号機のない横断歩道の場合、左右を何度も確認しながらタイミングを探らなくても、まずは片側を確認すれば渡れますし、島で立ち止まって再び確認して渡るので、それぞれ横断のチャンスは増えます。
実際に二段階横断の安全性が検証されました。道路を撮影した動画のAI(人工知能)画像解析やデータ解析を行った結果、島に人がいる場合は70%の車が止まり、島がない道路よりも高い確率で道を譲ってくれることがわかりました。しかも駅前では95%にまで高くなりました。横断施設(横断歩道や交通島)に近づく車のスピード自体も平均で時速3.9km遅くなるというデータも取れました。二段階横断は、歩行者の利便性が高まる上に、車が譲ってくれやすいメリットがあるわけです。

道づくりはまちづくり

二段階横断に関する日本のガイドラインはまだ定まっておらず、協議、研究段階です。横断施設はただ多ければいいというわけではなく、歩行者が使いたい場所にないと意味がありません。スクールゾーンなど設置場所によっては、歩行者の安全意識の向上にもつなげられます。ドライバー側の視点も必要で、海外にある横断歩道とセットではない「島」だけを作る手法も日本で使われるとよいでしょう。ちょっとした工夫で信号機に頼らなくても事故が少ない円滑な道になり、ひいては道づくりから安全な都市構造を組み立てることができるのです。

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名古屋工業大学 工学部 社会工学科 環境都市分野 教授 鈴木 弘司 先生

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交通工学や交通計画学では、物理に加えて数学の知識、特に統計学を用います。データを処理し、科学的な裏付けを持った結果として、世の中に数値を示す必要があるので、まずは日常で見かける数字の意味に関心を持ってほしいです。
理系文系どちらに進むにしても数学は大切で、また国語力も大事です。世の中に出ると、説明をすることがとても重要になるからです。数学の問題も国語ができないと解きづらいでしょう。理論立てて説明するためにも、理系だからといって国語をおろそかにすると、後で大変な思いをします。しっかり勉強しましょう。

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