アメリカは、国内で起こる分断によって衰退する?
かつては「強い」イメージだったアメリカ
アメリカといえば、経済的にも軍事的にも強い超大国、そんなイメージかもしれません。しかし、現在のアメリカは衰退しつつあるといわれています。その大きな理由の1つとして、アメリカ社会の分断という問題が挙げられます。アメリカにはリベラルな「民主党」と保守的な「共和党」という2つの大きな政党があります。かつては2つの政党のあいだで共通する考え方も多かったのですが、最近はお互いの政治的理念が分極化し、相容れない状態になっています。
民主党と共和党、支持者の考え方の違い
それぞれの政党の支持層も大きく2つに分かれています。民主党支持者の多くは少数派の権利擁護の立場から、アフリカ系アメリカ人やLGBTなどへの差別に反対しています。一方で共和党支持者には白人の低所得層も多いため、「Black Lives Matter」などの人種差別抗議運動によって少数派の立場が強くなり、自分たちの立場がおびやかされるのを懸念する人もいます。
また新型コロナ対策について見れば、民主党支持者はマスク着用やワクチン接種に積極的でしたが、共和党支持者は個人の自由を重視するため、政府による強制を好みません。なかにはマスク着用を強制されることを極端に嫌って、デモや暴動を起こす人たちさえいたほどです。
アメリカは復活するのか?
こうした考え方の違いによる対立がアメリカの衰退に拍車をかけているといわれます。実は現在と似たような状況が1960年代から70年代のベトナム戦争の時期にもありました。アメリカは多くの人命を失い、経済的損失を被っただけでなく、ベトナム戦争をめぐり社会は分裂し、国としてのアイデンティティもゆらぎました。そのまま力を失っていくかと思われましたが、冷戦の終結とソ連の崩壊により唯一の超大国としてよみがえりました。今後アメリカが衰えていくのか、力を取り戻すのかはまだわかりません。どちらにしても、世界に与える影響は大きく、これからもアメリカの動きを注視していく必要があるでしょう。
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二松学舎大学 国際経済学部 国際政治経済学科 准教授 手賀 裕輔 先生
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