「わからないこと」は「わからない」 正しいリテラシーとは?

フェイク情報は見抜けない?
社会には多様なメディアから日々大量の情報が発信され、そこには間違った情報も大量に含まれています。日本の平均的な新聞購読者が新聞を読む時間は、一日あたりわずか10分前後、若者にいたっては新聞を読む習慣自体がほとんどありません。「情報を批判的に読み取るメディアリテラシーをもつことが大切です」という呼びかけは、さまざまなところで耳にします。しかし、情報洪水の中、時間的余裕を失いつつある現代社会にあっては、そうしたメディアリテラシーをもつことはとても困難です。
あいまいさに耐える
そもそも、現代は「情報社会」ではなく「情動社会」であるといえます。情報社会では、内容の「真か偽か」を判断することに意味がありますが、情動社会では「快か不快か」の効果が優先されます。単純で力強いメッセージを連発する政治家が多くの票を集めるのも、情動社会の特徴です。複雑なはずの現実を無理やり矮小(わいしょう)化する、どんな問題にも白黒をつけようとする、友か敵かで二分する、そんな傾向が強まっています。
こうした情動社会でこそ「ネガティブリテラシー」(消極的な読み書き能力)が必要です。これは、根拠がはっきりしない複雑な情報を、「わからないこと」として棚上げしたまま向き合う力、言い換えるなら「あいまいさに耐える」力です。
過去を見ながら未来を探る
デジタル情報のSNSが基軸メディアになり、情動社会となった現在、私たちが進むべき道を考えるためには、メディアの歴史を振り返ることが有用です。工業社会におけるラジオ・テレビ、市民社会における新聞・雑誌、それ以前の社会における口頭のコミュニケーションと、いつの時代も社会を動かす基軸のメディアがありました。メディア学者のマクルーハンは「バックミラーを見ながら前進する」という言葉を残しました。過去の人々がどのようにメディアを利用し、どのような「メディアの文法」が作られてきたのか、それを研究することで、これからの社会とメディアの未来がはじめて見えてくるのです。
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上智大学文学部 新聞学科 教授佐藤 卓己 先生
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