体の動きを科学し、高齢者の転倒予防や障がい者スポーツに貢献
人の動きを3Dデータ化して検証する
理学療法士は普段、リハビリをサポートしますが、人の動きや体の仕組みからけがなどの要因を探り、予防や対策には何が必要かを考えることも大切な仕事です。体についての学問に、人の動きを科学する「バイオメカニクス」があります。モーションキャプチャという、人の動きを3次元でわかりやすく表示してくれるシステムを活用し、人の複雑な動きを計測して検証します。
高齢者の転倒要因を探り、予防や対策へ
例えば、「背中の丸まった高齢者は転びやすい」という点を考察するには、背中の丸まった人とまっすぐな人の歩行の動きを比較します。背中が丸まった人は前傾姿勢になり、股関節とひざ関節への負担が大きく、この筋力が弱いと転びやすいことがわかります。すると、お尻の筋力や、ひざ関節の強化が転倒予防に有効なことがわかるのです。また、高齢者は転倒して骨折し、寝たきりになるケースもあります。転倒予防を検証するため、高齢者の歩きをモーションキャプチャでとらえます。すると、転ばないように後ろ足をきちんと前に出すには、前足で踏ん張ることの必要性がわかります。これらを臨床現場や健康講座などで生かしていくのです。
障がい者スポーツの実践にも役立つ
もうひとつ、対象としているのは障がいのある人たちです。目の不自由な人がプレーするブラインドサッカーという競技があります。初心者の上達をサポートするために、日本代表選手の動きとモーションキャプチャで比較すると、体幹の使い方、ボールの蹴り方など、違いは一目瞭然です。ただ、視覚障がいのある人は写真や動画を見て確かめることができません。そのため、点字を応用した、点で図を表す「点図ディスプレイ」を使って違いを表示し、指で確認して体の使い方を伝えるのです。このように体の動きや仕組みを検証することで、医療やスポーツの現場で役立てることができます。患者や利用者の声を聞きながら改善し、どう活用するかも検討することで、より良いツールとしていくのです。
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筑波技術大学 保健科学部 保健学科 理学療法学専攻 講師 佐久間 亨 先生
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