「日本人」と「外国人」の違いとは 多様な日本人を受け入れる社会へ
「外国人」の定義はない
「外国人」という言葉は日常的に使われていますが、実は日本には「外国人」の明確な定義はありません。日本国籍を持つ人が「日本人」であるとし、便宜上、それ以外の人をすべて「外国人」としているだけです。そのため、外国の国籍を持っている人だけではなく、無国籍者や、台湾・北朝鮮といった日本政府が国家と認めていない地域の人々も外国人となります。一方、日本と外国の両方の国籍を持つ「二重国籍」の人については、日本の国籍法で22歳になるまでに1つの国籍を選択するよう定めています。
多くの先進国は二重国籍を容認の方向へ
スポーツの世界では、外国にもルーツを持つ選手の活躍が目立ってきました。もし、このような選手たちが将来、外国の国籍を選択したら、日本人選手として応援できなくなるのでしょうか。また、ノーベル賞の受賞者で外国に国籍を移した人を日本人受賞者と呼ぶのか、という議論もあります。このような議論が起こるのは、日本が原則、二重国籍を認めていないからです。しかし、ほかの先進国の多くは二重国籍を容認するように変わってきています。これはグローバリゼーションが進み、国境を越えた人の移動が当たり前になっていることの表れでもあります。
国籍や肌の色で区別しない多様な日本人像
一方、島国でほぼ単一民族の国家に近いことから、日本には国籍も1つがよいという考えが根強くあります。しかし国籍や、髪・肌の色の違いにこだわらず、多様な人を日本人だと考える風潮も、だんだんと広がっています。東京オリンピックなどでも、多様な日本人が活躍する場面を目にする機会も増えるでしょう。
これからはますます、多様な日本人が、いろいろな場所で活躍する動きが加速していくはずです。法律や制度、歴史などさまざまな視点を踏まえつつ、人々の考えや社会情勢の変化をとらえ、「日本人とは何か」「国家とは何か」について思考していくことが社会学に求められます。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 教授 丹野 清人 先生
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