経済を成長させ、人を幸せにするICTの効果とは
ICTと経済成長
経済学では、メールやWeb、SNSといったICT(情報通信技術)が、経済成長にどの程度結びついているのかを分析している分野があります。経済成長をうながす生産要素には、主に「労働力」と「資本設備」がありますが、この「資本設備」の中に、パソコンやソフトウェア、ルータといった企業が投資した「ICT資本設備」が含まれており、このICT投資額と経済成長との関係を分析することで、ICTの生産性に対する効果が見えてきます。
日本経済とICT
日本では、1990年代の後半からインターネットとパソコンが普及し、現在は通信インフラの高度化とパソコンの計算能力の向上から、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータといったイノベーションも多数生まれています。しかし、日本の経済成長率は1990年代以降低迷を続けていることから、ICTが十分に生かされていないことが懸念されます。従来のアナログなやり方とICTが共存し、新しい技術ができても古い技術とつなげようとする傾向が他国より強く、新しい技術のポテンシャルが発揮されにくいことが一因であると考えられます。
Well-beingを高める
一方でICTは、人に直接働きかけて、人が心と体、そして社会的に満たされた状態を表すWell-being(ウェル・ビーイング)を高めることにもつながります。スマートフォンが普及したことで、便利なアプリを直ぐに利用できる環境が整い、しかもそれらのアプリは無料で利用できるものが多くあります。そのため、世界中の人が大きな恩恵を受けられます。このように、ICTは企業の生産性への効果もさることながら、経済学で消費者余剰と呼ばれる消費者側へのメリットへの効果が大きいと考えられます。
今後もAIをはじめ、新たなICTツールが導入されていきますが、それらが企業をどう成長させ、また消費者余剰やWell-beingを高められるのか、専門的な経済理論や統計技術を駆使して明らかにしていくことも、経済学の大切な役割です。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 経営法学部 経営法学科 准教授 久保田 茂裕 先生
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