電気代が上がると、人は電気の使用を控えるのか
お願いだけでは使う電気は減らないから
2011年の東日本大震災のあと、電力不足が起こり、関東地方では計画停電が行われました。国や電力会社は「電気が足りないから使うのは控えましょう」とお願いしました。多くの人が協力しましたが、ただお願いするだけでは限界があることが浮き彫りになりました。
そんなとき役立つのが経済学です。経済学は価格を使って人の行動をコントロールすることができます。近年は、価格以外の情報を提供することで人々に省エネや節電を促す取り組みもあります。
最初は使用量が減ったが
2012~2014年にかけて、電気料金を上げることで使用量を減らせるかを問う社会実験が行われました。ある集合住宅の住民に協力してもらい、時間帯によって電気料金を高くしました。普段は15円/kWhのところを50円/kWh、75円/kWh、100円/kWh、150円/kWhと最大10倍まで設定して、どんな効果があるかを見ました。最初は電気料金が上がるにつれて、電力使用量は料金の変化に応じて減りました。しかし2回目以降は同じ結果になりませんでした。
関心がある人を増やして社会を変える
当初想定されていたのは、電気料金が上がるごとに使用量は減る、というストーリーでした。最初実験では電気代が上がることを心配して使用を控えたものの、1回目で「思ったより高くならない」と安心したのか、電気料金に応じた省エネや節約をやめたと推測されます。一般的にダイエットが長続きしないように、人は次第に慣れます。将来はそういった心理的な面も踏まえた行動経済学的なアプローチも必要でしょう。またこの実験は短期的なものでしたが、長期的な試みをすれば結果が変わる可能性もあります。
日本において電気は安定供給されてきたため、空気や水のように使えると思われがちですが、しかし、実際はそうではありません。まずはエネルギーや環境に関心がある人を増やすこと、そのために多面的な研究が必要とされます。
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先生情報 / 大学情報
北九州市立大学 経済学部 経済学科 教授 牛房 義明 先生
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