すべての人に当てはまる合理的配慮~障害者差別解消法から考える~

すべての人に当てはまる合理的配慮~障害者差別解消法から考える~

解消法と禁止法

2016年に「障害者差別解消法」が施行されました。アメリカやイギリスでも同様の法律がありますが、名称は「禁止法」となっています。障がい者が地域で共に暮らすという目的は変わりません。しかし、「禁止法」という名称は、何が差別にあたるのか分かりづらいため、極端に言えば、障がい者との関わりを避ける恐れがあります。日本では、差別の禁止ではなく、解消するというメッセージを名称に込めました。

合理的配慮を図る

1960~70年代には、障がいはないほうがいいものと捉えられ、リハビリによって本人のできることを増やすという方針でした。リハビリに励めばできることは少し増えるかもしれませんが、健常者と同様にまで高めるのは困難です。それが障がいです。現在は、環境さえ整えられれば、障がい者も本来持っている能力を発揮できるという考えに変わりました。この法律では、できないことを支援で補うことを「合理的配慮を図る」という言葉で表しています。
「合理的配慮を図る」は、障がい者に限ったことではありません。子どもや高齢者などの社会的弱者に対しても同じです。さらに、すべての人が「補い・補われる」存在です。例えば、あなたも、コロナ禍で授業の方法が変わった時に、頼れる人に聞くこともあったかもしれません。合理的配慮を図ることは、障がいの有無にかかわらず、共に暮らすために大事なことです。

これからの課題

現在の法律では、合理的配慮を図ることが義務付けられています。しかし、「障がい者から意思の表明があった場合」と書かれています。これは、障がいのある人の意見を聞きながら配慮を行うという意味なのですが、意思の表明がなければ、合理的配慮を図らなくてもよいとの誤った解釈が多く見受けられます。障がいによっては、自分にどんな障がいがあって、どんなことが苦手かを説明しづらい人もいます。それにより、配慮を受けられる人と受けられない人の差が生まれてしまう恐れがあります。こうした懸念をどのように解消するのかが、今後の課題になっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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新潟県立大学 人間生活学部 子ども学科 准教授 西村 愛 先生

新潟県立大学 人間生活学部 子ども学科 准教授 西村 愛 先生

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社会福祉学

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メッセージ

受験勉強には必ず答えがあるので、答えがあることが当たり前と思うかもしれません。大学生からも「答えはなんですか」と聞かれることがあります。しかし、福祉の世界には正解がないことも、時代によって答えが変わることもあります。障がい者に関する歴史をひもとけば、どうしてこうなっているのかと不思議に思うこともあるかもしれません。
知識を得たうえで、そこに疑問を持つということが理解へとつながります。もっと知りたいという欲求と、どうしてなのだろうという疑問の心を大切にしてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

新潟県立大学に関心を持ったあなたは

新潟県立大学は、知識・技能・態度等を総合的に活かし、知的な行動力でグローバルそしてローカルなコミュニティに貢献できる人材の育成を目的とします。
グローバルそしてローカルなコミュニティの今日的な課題に取り組み、学際的に研究・教育をする観点に立ち、国際化に対する基礎体力(語学力)を鍛えます。また現代社会の変化に即応できる教養教育を実践し、学生の自己実現を支援する中で専門的知識・技能を有し地域社会に活躍できる人材を育成します。ひとづくりを通じて地域の国際化・振興に貢献することを目標とします。