歩く速さは、健康に関係する?
理学療法の歴史
理学療法とは、患者さんが日常の動作を無理なく行えるよう、基礎的な運動機能の改善を行う治療で、指導、補助するのが理学療法士です。もともとは身体能力の高くない健常者に、スポーツトレーニングの理論を適用するにはどうすればよいか、という発想から生まれました。健康な人の筋肉の動きや反応といった運動機能の研究が進み、そのうちに身体機能が低下している病気や障がいのある人に適用、応用されて発展しました。
歩く速さは「1秒間で1メートル」
高齢者人口が増加する日本では、身体機能の維持が注目されています。高齢者の事故で多いのは「転倒」です。転倒予防に効果的なのは、適度に速く歩くことです。基準は「1秒間で1メートル」です。それより遅いと、例えば2年後に日常生活で介助が必要になる、あるいは将来基礎疾患を発症するリスクが高まるといった研究報告があります。ただし、速く歩けば寿命が延びるというわけではありません。
では、速く歩くにはどうすればよいでしょうか? ヒントは横に振れ過ぎないことです。歩くためには足を前に出しますが、そのとき体重を移動させるため体が左右に振れます。歩きがゆっくりであればあるほど揺れ幅が大きくなり、転倒リスクも高まります。逆に横揺れ幅を小さくすれば前進する力が増し、歩行速度も速まります。それを補助する器具の開発も進められています。
リハビリテーション医療とは
リハビリテーションには、基本となる訓練プログラムがありますが、必ずしもその通りに進まないのが現場です。なぜなら相手は人間だからです。リハビリとは、患者さんが日常に戻るための訓練ですが、その日常は一人ひとり違います。毎日外を歩き回る日常か、自宅で家事をこなす日常かでも、それぞれ最適なプログラムは違うのです。そこで求められるのが、患者さんの体の動きやできる動作を毎日つぶさに観察することで生まれる、臨機応変な対応です。リハビリテーション医療は、そうした日々の取り組みから発展していく分野であるといえます。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 教授 淵岡 聡 先生
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