農作物を病気から守るカギは微生物だった!

農作物を病気から守るカギは微生物だった!

植物と共生する微生物

人間や動物の腸の内部には腸内細菌として微生物が存在しています。乳酸菌のような善玉菌もあれば、そうではない悪玉菌もあります。同じように植物の周りにも、多種多様な微生物が集団で存在しており、その集団を微生物叢(そう)といいます。人間や動物のように自力で動けない植物は土に根を張り、土壌から水分や栄養分だけでなく微生物も取り込んでいます。また、根だけではなく、葉などの地上部にも微生物叢が生息します。微生物の中には、植物に感染して病気を起こすものもありますが、逆に病気を抑える働きのあるものや、健康を促進するものもあります。微生物と植物とは敵対関係でもあり、共生関係でもあるのです。

持続可能な食料生産につながる微生物

現在の農業は、農薬や肥料が使われ、また一つの作物を広い面積で育てているため、生産効率が高いです。作物は丁寧に管理されていますが、効率を求めた画一的な環境にあるため、一度病気が出ると被害が広がりがちです。これを受けて、植物の病気を抑えたり成長を促したりするために、微生物を活用する研究が進められています。農薬や肥料は、適切に使われているとしても環境への影響が不安視されており、これらを減らすためにも微生物は有効です。持続可能な農業のために、世界の多くの国々で微生物が注目されています。

微生物の力でトマトを病気から守れ!

例えばトマトの病気を抑えるために、共生する微生物を探すとします。病気のトマトが多い畑の中にも、病気にかかっていない健全なトマトがあります。それぞれのトマトから微生物を抽出すると、健全なトマトには病気のトマトには存在しない微生物が見つかります。健全なトマトから分離されたこのような微生物は、病気を抑える働きを持つと推測できます。この微生物を分離し、培養していくことで実際に病気を抑えられる効果を持つかがわかります。こうした探究がうまくいけば、安定的な生物農薬の新たな候補になるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

静岡大学 農学部 生物資源科学科 准教授 橋本 将典 先生

静岡大学農学部 生物資源科学科 准教授橋本 将典 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

植物病理学、土壌微生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

植物圏微生物の研究は、持続可能な食料生産の実現を目指しています。世界的な課題となっている食料生産に大きく関わる、将来性のある学問です。植物が目に見えない微生物叢とどのように関わるのか、その仕組みを解明するのは謎解きのような面白さがあります。
大学は自分の貴重な時間を使って通う場所なので、在学中にぜひ自分のやりたいことを見つけてほしいと思います。そつなくうまく生きることだけでなく、自分の興味関心や好きなことを見つけ、それをさらに拡げることに注力してほしいです。

先生への質問

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静岡大学は、7学部を擁する総合大学のメリットを生かし、学生の知的探究心に応えることができる幅広い学問領域の教育を実施しています。大学の理念は「自由啓発・未来創成」であり、これは自由によってこそ自己啓発を可能にし、それを通じて、平和かつ幸福な未来を創り出すとの力強い思いを表明しています。
失敗を恐れず若々しいチャレンジ精神をもち、人の意見によく耳を傾け、それに学び、協調性豊かに自己主張ができる人の入学を期待します。