過去の経験から人は未体験の災害を予測する!
台風による災害被害を予測する
「河海工学」とは、自然の営力(波、流れ、降水)によるさまざまな現象(氾濫、土砂の輸送など)の法則を理解し、それを活用して都市・自然空間を形成するための学問です。大気や海洋などの自然現象を対象に、災害や環境の問題のシミュレーション、実験、現地観測を行います。
例えば台風の災害リスクを評価するとしても、衛星観測の開始から約60年程度のため、低頻度大災害の評価は難しい状況です。そのため、観測された台風資料や地球シミュレータの計算結果を駆使し、台風の統計モデル化を行い、起こり得た台風のシミュレーションを行うことで、何百年に1度の大災害を推定する方法が構築されています。また、気候変動によって将来激甚化する台風についても、この手法を応用して推定することができるようになりました。
流れの計測とモデリング
防波堤に使われる消波ブロック(テトラポット)など多数の間隙をもつ構造物は、台風などで生じる長周期の波を減衰させる機能があります。しかしその間隙部の水の流れは計測が難しく、より合理的な設計のためにも流動メカニズムの解明が必要です。そこで特殊な溶液と模型を用いて構造物内部を透過して計測できる画像計測技術を使い、内部流動による波浪減衰の法則について研究が進んでいます。そのほかにも、延長100mや50mの造波水槽を使った実験も進められています。
スマホで撮影した画像の解析から砂浜をモニタリング
海面上昇などの影響で砂浜の侵食が予測されています。高精度な予測のためにも、砂浜の基本情報である砂の粒径を全国でモニタリングする必要があります。しかし全国の砂浜は主要なものだけでも800以上もあり、粒径の情報は不足しています。現地で砂を採取する必要がある従来のふるい分析法には限界があるため、スマートフォンで撮影した砂浜の画像を解析することで粒径分布を取得する方法が開発されています。これにより誰もが簡単に参加できるため、世界でも類をみない砂浜データベースを構築することが期待されます。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 工学部 都市学科 准教授 中條 壮大 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
都市工学、河海工学、海岸工学先生が目指すSDGs
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