地域の伝統や思いを生かす国際協力のあり方とは

地域の伝統や思いを生かす国際協力のあり方とは

国際協力のあり方

近年、日本だけでなくアジアや太平洋の国々も台風や地震の被害に遭うことが多く、周辺の国からさまざまな協力、支援が行われています。先進国から途上国への支援は、強風や揺れ、津波から建物や街を守る強靭(きょうじん)な施設、つまり近代的な技術を駆使した「ハード面」の支援が中心です。しかしその地域に暮らす人々は、古くから自然災害に対処してきた歴史をもっています。こうした現地の伝統やコミュニティー、人々の思いを大切にすることは、国際協力や国際開発を考える上で欠かせない要素です。

災害に強い伝統的建造物

例えば南太平洋のバヌアツ共和国には、「ニマラタン」というカマボコ状の伝統的建造物が今も残っています。これは非常に強固な構造をもっており、国中の8割の建物が倒壊した猛烈なサイクロンにも負けることなく、シェルターとして住民を守りました。また、フィジー共和国にも、台風の発生時に壁を外し、強風の被害を軽減できる住居があります。こうした伝統的建造物はその地域の環境、災害の特性に適応する中で生まれたもので、鉄筋やコンクリートを用いる近代建築に劣らない強度をもっているものもあります。しかし残念ながら徐々に数が少なくなっており、建築方法を知る人も減少しています。

持続性のある地域づくり

こうした太平洋やアジアの諸国に伝わる伝統的な建築やそれに付随する生活様式は、正確に記録されていることが少なく、学術的な研究によって明らかになることが多くあります。その研究では、建物だけでなく、そこに暮らす人々の家族構成やおのおのの居住スペース、仕事や現金収入を得る方法など、コミュニティーを構成するさまざまな要素が調査対象になります。また、研究においては現地の人々と共に考える姿勢も重要です。現地のコミュニティーに受け継がれてきた、自然との共生のあり方や災害に対する知恵といった要素にもしっかりと目を向けることで、より持続性のある地域づくりのあり方が見えてくるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

京都精華大学 国際文化学部 グローバルスタディーズ学科 講師 藤枝 絢子 先生

京都精華大学 国際文化学部 グローバルスタディーズ学科 講師 藤枝 絢子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

国際協力論、建築学

先生が目指すSDGs

メッセージ

これまで大学での学びや大学院での研究活動、国際機関での実践など、その都度興味のあることや課題に感じたことを追究して今に至っています。その中で国内外を問わず多くの文化や人に接し、柔軟に考える姿勢を身につけることができ、また、それぞれの経験や出会いが現在の研究の糧になっています。
人生を計画的に生きることも大切ですが、その都度やってきたことが、ひとつの流れに緩やかにまとまるという人生もありだと思います。あなたも今好きなことや興味のあることに躊躇せず全力で取り組んでほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

京都精華大学に関心を持ったあなたは

京都精華大学は、アート、デザイン、マンガ、音楽、ファッション、文学、歴史などが学べる「芸術と文化」の総合大学です。さまざまな分野を学ぶ学生、海外からの留学生が集まる多様性溢れるキャンパスです。本学では、あなたの好きなことや得意なことをきかっけに、個性を大切にしながら、それぞれの「専門性」を高める教育をおこなっています。そして、学生同士、学生と企業、学生と社会といった組み合わせで、「共に学ぶ」プログラムにも取り組んでいます。あなたの好きや得意をいかして、一緒に新しい未来を創りませんか?