妊婦の人生と向き合う助産師
妊婦の思いを受け止める
助産師は出産介助のプロですが、それだけが仕事ではありません。妊婦はさまざまな思いを持っており、特に若い年齢で妊娠して誰に相談していいかわからない人や、なかなか子どもを授かれない人、高齢出産の人、多胎妊娠の人、経済的に不安がある人など、悩みの深い人もいます。その思いを最初に助産師がキャッチすることで、産後うつや虐待の予防だけでなく、妊婦や子ども、家族のその後の人生がより良い方向に変わることが多いのです。そのため助産師はその思いをまず受け止め、最善の方法を一緒に考えます。
妊婦の生活設計を支援する場合も
問題がある場合はソーシャルワーカーや保健師、カウンセラーなどとチームを組み、本人の希望が実現できるように支援します。家庭不和や、貧困などの経済的な問題を抱える人もいるので、生活設計から一緒に考える場合もあります。ほかにも、妊娠前の体づくりやカップルの心のつながりについてアドバイスをしたり、産後の子育て支援も助産師の役割です。また、妊娠を疑ってもストレスで月経が遅れているだけだったり、他の病気で「つわり」に似た症状が出たりする場合があります。悩みを抱える人や妊娠検査薬で自己判断してしまう人は最初の受診が遅れがちという問題もあります。妊婦と胎児の命を守るためには、早期に受診して子宮外妊娠かどうか、多胎の場合にはリスクのある多胎かどうか鑑別する必要があり、助産師や医師の専門的な知識と技術が必要なのです。
医師以外で、正常な妊娠を管理できる唯一の職業
助産師は医師以外で、正常な妊娠・分娩を管理できる唯一の職業です。医師が必要となる帝王切開や無痛分娩などを除き、正常な経過の出産は助産師の責任で介助できます。助産院の開業もでき、これは医療施設で仕事を行う看護師や、行政や企業で働く保健師との大きな違いです。出産という人生の重要なイベントをともに経験できるだけでなく、思春期の子どもや子育て期の家族など、親、特に母親と子どもに深くかかわることのできるやりがいのある仕事なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 看護学部 看護学科 准教授 古山 美穂 先生
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