講義No.11766 社会学

地域社会って本当にあるの? 伝統や生活を支える住民のつながり

地域社会って本当にあるの? 伝統や生活を支える住民のつながり

地域社会は実在する?

あなたは近所に住む人についてどの程度知っていますか? 名前や家族構成、経歴などを詳しく知っていることもあれば、誰が住んでいるのかもわからない場合もあるでしょう。特に都市部では地域とのつながりが希薄になってきました。町内会や自治会といった、公と民をつなぐ中間組織が解体される事例も多く見られます。

沖縄独自の地域社会

都市部に比べ、地方では地域社会が根強く残っている傾向にあります。特に沖縄北部では「字(あざ)」という地域社会が重視されています。字とは「市町村」が作られる前から存在していた、伝統的な地区です。新しく引っ越してきた住民に対しても、出身の市町村より先祖の字を確認します。字がこれほど重んじられている理由はまだ研究段階ですが、米軍の軍用地との関係が注目されています。沖縄の軍用地は、もともと個人や字の所有地だった場所が多くあります。終戦後、基地の土地使用料は日本政府が支払うことになりました。つまり字の所有地が軍用地になっている場合、継続的に土地代が入ります。一部の字は戦前から土地を所有していた人の子孫のみが使用料を得られるとされているため、先祖の字を重視していると考えられるのです。

生活や伝統を支える役割

地域社会には、祭りなどの伝統文化や住民の生活を支えるといった役割も見られます。例えば沖縄では、住民が出資して地域の共同売店を経営しています。食料品や日用品などを自治会の人が買い付け、字に持ち帰って販売するのです。生活に不可欠な共同売店を存続させるため、住民も運営に協力しています。
沖縄をはじめとする全国の事例から、地域社会は現代でも実在しており、さまざまな形で住民たちの生活に大きく関わっていることがわかってきました。自治会の役割は都市部でも一目置かれ始め、一度自治会がなくなった地域にも変化が生じています。災害時の救助、高齢者や子どもの見守りなど機能を限定したうえで、有志による自治会を結成した例もでてきています。

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大阪経済大学 情報社会学部 情報社会学科 教授 難波 孝志 先生

大阪経済大学 情報社会学部 情報社会学科 教授 難波 孝志 先生

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メッセージ

物事を見るときは、別の角度からも考えてほしいです。例えば沖縄には、観光地や軍用地以外にも多くの側面があります。また、場所が変われば常識も変わります。ドイツでは人前で鼻をすすることはタブー視されていますが、大きな音を立てて鼻をかむことは問題ありません。
一度疑って斜めから見れば、新しい発見があるのです。地域社会のとらえかたも、外国と日本では違うかもしれません。こうした疑問に気づくためにも、まずはなんでも複数の視点で観察することが大切だと思います。

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