ヒートショックを防げ! 危険度判定システムの開発

ヒートショックを防げ! 危険度判定システムの開発

冬に起きる「ヒートショック」

冬の住宅内では、暖房のある部屋と暖房のない廊下や浴室などでは温度差が大きくなります。寒い部屋に入ると体がブルブルと震えるのは、筋肉で発熱するとともに血管を縮めて血流を減らし、熱を逃がさないように調整しているからです。この時、血管が縮むことで血圧は急上昇します。反対に暖かい場所に移動すると血管は広がり、血圧は急低下します。この血圧の急変動が心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こし、これをヒートショックと言います。特に冬場では居間と脱衣所、浴槽の湯の温度差が大きいために、ヒートショックが原因と思われる溺死事故が発生しています。

温めたり冷やしたりしながら血管の拡張や収縮を撮影

ヒートショックを起こす危険度を判定するシステムの開発が進められています。鍵となるのは血管の収縮拡張機能で、その観察に使われるのは近赤外線撮影の技術です。近赤外線は可視光よりも皮膚を透過しやすい一方で、血液中のヘモグロビンには吸収されます。そのため、近赤外線を照射して画像を撮影すると、血管が黒く写し出されるのです。この撮影方法は医療だけでなく、ATMの生体認証方式などにも広く利用されています。これに手を温めたり冷やしたりする機能をプラスして、温度を変化させながら撮影を行うことで、温度変化による血管の収縮拡張状態を見るという仕組みです。

予防に役立てる

まずはこのシステムを使ってより多くのデータを集め、ヒートショックを起こしやすい人の血管の特性を導き出します。その上で、将来的には健康診断時などにこのシステムで自分の体質を知ってもらい、ヒートショック予防に役立ててもらうことが目標です。
このようなシステムは、目的の現象を引き起こす生体的な原因を突き止め、その原因を測定できるように既存の機器の組み合わせを考えて開発を進めていきます。機器を組み立てる機械工学の知識だけでなく、回路を考える電気工学、画像処理を行う情報工学、病気を知る医学、生体に関わる生物学など、学問を横断した広い知識が必要です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

高崎健康福祉大学 健康福祉学部 医療情報学科 准教授 髙橋 大志 先生

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メッセージ

何かを生み出すには、そのことに関する知識をどれだけ理解できているかが重要です。理解がなければ物を作ることはできません。もちろん座学は必要ですが、実験や実習の中でどれだけ知識が身についているかを確認すると、本当の意味での勉強になります。
そして、理解した知識をどのように生かすかを考えることが大事です。暗記は試験のための対策であって、人生を豊かにはしません。人生を豊かにするために必要なのは、知識を役に立てられるような考え方を持つことであり、実際に動いてみることがとても大切です。

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高崎健康福祉大学は「あなたの笑顔が、わたしの笑顔」となるために7つの道で考え抜く大学です。乳幼児からお年寄りまで、あらゆる世代をカバーする「健康」「医療」「福祉」だけに特化した5学部・8学科をそろえ、人を支えることの出来る、前向きなチカラを育てています。