腸内細菌と心と体 栄養学の視点と学際的な探究

脳と心にも影響する腸
腸内環境は、腸内細菌の種類とバランスによって決まり、心と体の健康に深く関係しています。そのため、腸内環境を整える食事が大切です。また、腸内で何が起きているのか、腸内細菌の状態などを明らかにすることも重要です。
大きな不安や心配があると、下痢や腹痛を起こす人が多くいます。これは、腸と脳が密接な関係にあるからです。腸の状態は、脳や心にも影響を与えます。腸の調子が悪いと、不安やイライラなど感情を悪化させる要因となりえます。
腸内細菌と脳の関係を調査すると、うつ病などの精神疾患と関係していることがわかりました。健康な人と精神疾患がある人の腸内細菌を調べると、精神疾患がある人は腸内のビフィズス菌や乳酸菌の数値が低いのです。腸と脳の関係を利用し、腸内環境を整えることで、精神疾患を改善できる可能性があるのです。
腸内環境は予防医学につながる
近年の研究で、母親の腸内細菌が子どもに影響することもわかっています。赤ちゃんは、産道を通るときに母親の腸内細菌を受け取って生まれます。子どもの健康や精神疾患予防のために、母親は妊娠前からできるだけ腸内環境を整えることが大切です。
一般的に腸内環境を整えるには、ビフィズス菌や乳酸菌、オリゴ糖、食物繊維が良いといわれています。ただし、その人の腸内細菌にあわせた摂取でないと効果が減少します。例えば腸内にビフィズス菌がない人は、腸内で炭水化物の吸収を抑えて発酵を促進する希少糖という食材が有効、といった具合です。
学際的に腸内細菌を明らかに
さらに今、注目されるのは短鎖脂肪酸です。これは腸内の善玉菌の代謝でつくられ、腸と脳の関係に影響を与えています。効率よく生産する方法がわかれば、健康促進に貢献できると期待されており、予防医学にも役立つでしょう。
どんな食材のどの成分が腸内細菌にどう影響するかといった栄養学的な視点に加えて、微生物学、医学などを含めた学際的な研究により、腸内細菌と心と体との関係が明らかになりつつあります。
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仙台白百合女子大学人間学部 健康栄養学科 教授相澤 恵美子 先生
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