「人の目が気になる」ことの良いこと、悪いこと
人がいると集中できる?
勉強するとき、カフェや図書館のような人がいる場所の方が、自宅よりもはかどるという人は少なくありません。逆に、人がいる場所では集中できない人もいます。人がいる場所では、実際に誰かに見られたり、話しかけられたりしなくても「見られている」という意識が生まれてある種の緊張状態になります。その緊張状態によって、勉強などの作業パフォーマンスが向上することを「社会的促進」、反対にパフォーマンスが落ちてしまうことを「社会的抑制」といいます。
どうすれば「いい意味での緊張」になるのか
これまでの研究で、簡単・慣れた作業など、成功イメージを持つものは社会的促進が、その反面、難しく不慣れな作業は社会的抑制が生じやすいことが明らかになっています。勉強場面に応用すると、得意科目はカフェなど人目につくところがいいですが、難しい長文読解の問題などは誰もいない場所を選ぶといいかもしれません。スポーツの場面では、緊張して力が発揮できない人は社会的抑制が起こっている可能性もあるので、自信を持てるまで練習を重ねたりイメージトレーニングをすることで社会的促進を起こせれば、いつもより良い成績になるかもしれません。
周りに人がいると、ついサボってしまう
学校の掃除当番のとき、周りにまかせてついサボってしまったことはないでしょうか。周囲に人が多いほど、みんなが手を抜きやすくなることがこれまでの研究によって明らかになっており、心理学ではこれを「社会的手抜き」といいます。これは、人が多いことで「どうせ誰かがやるだろう」「自分だけがんばるのは損だ」と思いやすくなってしまうことが背景にあります。つまり、手を抜くという行為は、あなたの性格というよりも周囲の環境が深く関わっています。この心理的メカニズムを応用すれば、「個々の行動の成果を可視化する」「集団の連携を高める」といった、社会的手抜きを防ぐ手立てを考えることができます。原因がわかればその対策を講じてより良い社会を構築できるのも心理学の大きな魅力です。
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先生情報 / 大学情報
京都橘大学 総合心理学部 総合心理学科 教授 前田 洋光 先生
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