児童福祉のゴールは、施設を出た後の子どもたちの自立
少子化でも減らない、施設で暮らす子どもたち
日本は少子化が進み、子どもの数自体は減っていますが、さまざまな要因で施設で暮らす子どもと、里親に引き取られている子どもを合わせると、2012年現在、日本全体で3万3千人ぐらいになります。両親共にいない子どもは、この内の1割ほどで、残りは親がいるのに、一緒に暮らすことが困難なケースです。その大きな要因として、親を取り巻く経済環境が厳しくなっているという状況があります。不景気のために雇用が不安定になり、安定した収入を得られない人が増えています。そのしわ寄せが、子どもに及んでいるのです。
原因を追求して予防策を考える
原因が親の状況にあるのだとすれば、子どものことだけを考えていても解決は難しいでしょう。親の生活を支え、その生き方を向上させることで、事態の改善を図っていかなければなりません。ただ、現実問題として、親と離れて暮らさなければならない子どもは確実に存在します。そんな子どもたちに対する、施設での育て方も考える必要があります。最近は施設の状況も変化しつつあります。予算の制約はあるものの、基本的な方向性として、できるだけ小規模な施設で家庭的な雰囲気の中で子どもたちを育てられるように変わってきています。
施設を出た後に続く人生を、幸せに暮らせるように
児童福祉の目的は、決して「子ども」のときの幸せの実現だけではありません。忘れてはならないのが、20歳になった子どもたちが施設を出た後の、その後に続く暮らしです。それでは、彼らが幸せな家庭生活を築けるようにするには何が必要なのでしょうか。重要になってくるのが施設での体験です。施設を出るまでに理想の大人像や結婚の素晴らしさ、家庭の良さなどを子どもたちに教えること、これが施設養護の重要な課題となっています。家庭的な雰囲気が感じられる施設での体験は、成人した後の自立に向けての大きな力となると考えられているのです。
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大阪公立大学 現代システム科学域 教育福祉学類 教授 伊藤 嘉余子 先生
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