植物同士の「相性」を農業に生かす「コンパニオンプランティング」

植物同士の「相性」を農業に生かす「コンパニオンプランティング」

植物にもある相性

人間同士には「相性がよい・悪い」がありますが、実は植物にも相性があります。アメリカ大陸では古くから、カボチャとインゲン豆とトウモロコシは「スリーシスターズ(三姉妹)」と異名をとるほど相性がよいと伝えられています。トウモロコシは太く高い茎を持ち、そこにからみついたインゲン豆はよく伸びつつ空気中の窒素をうまく集め、土壌を豊かにしてくれます。一方で背の低いカボチャは雑草を排除し土の乾燥も防いでくれます。こうして三者が支え合って生育し、さらに空間も有効活用できるわけです。

相性が発現する遺伝子スイッチ

ほかにもトマトは、バジル、ニンジンを一緒に植えるとよく育ち、逆にジャガイモやキャベツ、ブロッコリーと一緒にすると生育が悪くなることがわかっています。このように相性の良い植物を組み合わせた栽培法を「コンパニオンプランティング」と呼んでいます。しかし相性の良さを支える科学的な根拠はほとんどわかっていません。
トマトの葉に傷をつけると、葉を食べる害虫が消化不良を起こす遺伝子が発現します。これはタンパク質分解酵素を阻害するもので、害虫の成長を防ぐ効果があります。そんなトマトですが、バジルと混植するとはるかに多くその遺伝子が発現し、さらにはバジルの葉から採れた精油だけでも同じ反応が見られます。一方、タイムの香りでは病害抵抗性遺伝子が強く発現します。

相性を使って安心・安全な農業を

現在の研究では、植物と植物とが互いをどう認識しているかは判明していません。もし植物間でどのような情報がやりとりされているかがわかれば、さまざまな環境ストレスに強い植物を育てられます。世界で比較すると日本は「農薬使用量が非常に多い国」です。これからの地球環境問題に対応する農業には、化学肥料や農薬の使用を抑えて環境に優しく、それでいて持続可能性と安全性が高いことが求められます。コンパニオンプランティングのメカニズム解明は、未来の新しい安心・安全な農業を開発する鍵を握っていると言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

鹿児島大学 農学部 農学科 環境共生科学プログラム 植物間コミュニケーション 准教授 吉田 理一郎 先生

鹿児島大学 農学部 農学科 環境共生科学プログラム 植物間コミュニケーション 准教授 吉田 理一郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

植物学、農学

先生が目指すSDGs

メッセージ

毎日、当たり前のように食べている食糧が、将来も同じように食べられるとは限りません。水資源の大量消費、化学肥料や農薬の継続使用が地球環境や生物多様性に与える影響が未知数だからです。そのため、食糧生産国が自国民を守る目的で輸出をストップする可能性もあります。
つまり既成概念を見直し、地球にやさしい持続的な農業に真剣に取り組む時代に突入しているのです。これからの10年は、今後の食糧生産の鍵を握る非常に重要な10年になるでしょう。ぜひあなたの若い力を貸してもらえればうれしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

鹿児島大学に関心を持ったあなたは

鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。