不思議がいっぱい! 未知なる電子の運動を解明しよう
光電子分光法でわかる電子の動き
物質の中での電子の運動を理解する実験手法の1つに「光電子分光法」があります。光電子分光法は、電子が光子のエネルギーを受け取ると物質から飛び出すという光電効果を説明した「アインシュタインの光量子仮説」がもとになっています。光を物質に照射し、飛び出してきた電子のエネルギーや角度を測定すれば、さまざまな物質の中で動く電子の速度や移動のしやすさを示す有効質量などを求めることができます。これらの情報は、物質の物理的性質を知り、次世代デバイスの材料を選ぶうえでも重要なものです。
有機半導体の中で電子はどう動く?
高精細のディスプレイを搭載し、美しい映像が楽しめるスマートフォンやテレビなどが人気です。これらには有機分子を材料とする半導体デバイスが使われています。有機半導体はこれまで主流だったシリコンなどの無機半導体に比べて柔らかく、曲げたり薄くしたりできるほか、安価に大量生産できるのがメリットです。そのため次世代のデバイスとして期待されていますが、有機半導体の中で電子がどのように動くのかなどはいまだよくわかっていません。有機半導体の性能を向上させ、さらなる実用化を推し進めるには、電子の動きや振る舞い方を知ることが必要です。
原子層物質には電子スピンという特性も
電子には、電荷と「電子スピン」という特性があります。電荷を持つ電子が移動することで電流が流れ、各電子の自転である「電子スピン」により物質は磁性を持ちます。この両特性を利用する分野をスピンとエレクトロニクスの造語で「スピントロニクス」と呼び、量子コンピュータなど次世代高機能デバイスの開発に応用されています。原子数層からなる「原子層物質」には、固体にはない特徴的な電子スピンが存在します。自然界に存在しない原子層物質を創り、その物質に現れる新しい物理現象の解明なども研究のテーマになります。そのことで一つの学理(学問上の原理・理論)を形成し、デバイスへの応用などで社会貢献につなげることもできる研究なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 工学部 応用自然科学科 応用物理学科目 教授 坂本 一之 先生
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