まちの存続が危うい? まちづくりの将来を考えよう

まちの存続が危うい? まちづくりの将来を考えよう

人口減少でまちがなくなってしまう!?

日本では今、人口減少が進む中山間部を中心に、「地方消滅」がささやかれています。確かに、人口が減るとまちの税収が落ち込み、公共サービスが維持できなくなり、生活を続けられない人はまちを離れ、人口減少に拍車をかけるという悪循環に陥ることもあります。そこで、政府は「地方創生」を掲げて、まちに新たな仕事が生まれ、人口が維持できるように、市町村に対して財政面でさまざまな支援を進めています。
もっとも、こうした動向には異論もあります。そもそも「地方消滅」というけれど、若者を中心に都市部から中山間部へ移住する「田園回帰」も始まっており、一面的な見方にすぎない、と説く研究者もいます。「地方消滅」や「地方創生」をめぐっては、学問上でさまざまな議論がなされているのです。

都市部でも「当たり前の暮らし」が危うい!?

このような話を聞くと、あなたは「中山間部の問題で、都市部に住む人には関係ない」と思うかもしれません。しかし、都市部でも生活上の問題が数多く発生しています。例えば、身近な地域に目を向けてみると、空き家が増え続け、周囲に生活上の不安を与えています。また、高齢者を中心に買い物難民と呼ばれる人が増加しています。これまで当たり前のように行われてきた町内会活動が維持できないところも出てきました。

まちの持続可能性をどう高めるかがカギ

ここでポイントになるのが、「まちの持続可能性をどう高めるか」という視点です。中山間部のなかには、新たな移住者やファンを増やし、まちの存続に挑戦しているところもあります。都市部では、空き家の有効活用や新たな移動販売車の導入、外部の力を活用した町内会活動の継続に取り組む動向が観察されます。
逆境に立ち向かい、まちの持続可能性を高めようとするこうした動きは、何に起因するのでしょうか。この問いに対し、現場に足を運び、インタビューを積み重ねて背景・実情を紐解いて、ほかのまちにも生きる視点や知見を導き出す姿勢が、地方自治の研究には常に求められます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

名古屋市立大学 人文社会学部 現代社会学科 准教授 三浦 哲司 先生

名古屋市立大学 人文社会学部 現代社会学科 准教授 三浦 哲司 先生

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地方自治論、まちづくり論

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は地方自治が専門で、学生と一緒に全国各地のまちへ出向き、さまざまな調査や研究をしています。地方自治論の特徴は、現場に出向いて人々と対話し、学び、研究成果を現場に還元することにあります。こうした学びは、政治学・経済学・社会学・法学なども関わる、学際的な分野です。
日常生活の中で、ぜひ、あなたの素朴な疑問や問題意識を大切にしてください。そこから学問が始まるはずです。大学では、地方自治の現実と将来の可能性について、一緒に考えましょう。

先生への質問

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名古屋市立大学は、医学部・薬学部・経済学部・人文社会学部・芸術工学部・看護学部・総合生命理学部の7学部とそれぞれの研究科およびシステム自然科学研究科からなる総合大学です。
大学の最も重要な使命は、優れた教育を通して地域および国際社会で活躍する有為な人材を育てること、すなわち「人づくり」です。知識の詰め込みではなく、自ら課題を見つけ、その解決に正面から取り組む姿勢を養うため、本学では、学生と教員の触れ合いを大切にし、演習、実習を重視する少人数教育を行っています。