代替肉の意外な素材! 食品加工で新しい価値を生み出そう

代替肉の意外な素材! 食品加工で新しい価値を生み出そう

新しい食品加工

食べる時に香りが広がるスパイスのペーストや、より豊かな味わいの発酵コーヒー豆など、さまざまな加工法で従来の食品に新しい価値を加える研究が行われています。
その一つが「玄米のスプラウト」です。もやしのように玄米を発芽させて、米を野菜として食べられるようにしたものです。発芽玄米は機能性成分のGABAを多く含むことが知られていますが、葉が出るまで芽を伸ばすとさらに含有量は増加します。また、米の種子部分も柔らかくなるので数秒間ゆでるだけで食べられます。発芽玄米はカビやすいなどの課題もありますが、それらを解決する栽培法が確立されつつあります。

麹菌そのものを食材に

もう一つが「麹(こうじ)菌で作る代替肉」です。従来、みそやしょうゆといった日本の伝統的な発酵食品作りに麹菌の生成する酵素が使われてきましたが、これに対して麹菌本体を代替肉として使おうという試みです。麹菌肉は、多様化する食文化に新しい選択肢を与えるだけでなく、畜産による環境負荷の問題や、将来予測されるタンパク質不足を解決するものとして期待されます。

美味しくてヘルシー

代替肉の素材としての麹菌にはさまざまなメリットがあります。成長が早いほか、なんでもえさとして取り込めるので、一般的な培地はもちろん、米ぬかや酒かすなどの食品未利用資源でも培養が可能です。また麹菌が作る糸状の「菌糸体」は、肉の繊維質な食感を再現するのに役立ちます。菌糸体は約40%がタンパク質でそのほかは食物繊維であるため、現代の健康志向にも適うでしょう。さらに、麹菌は抗菌物質を生成するため保存しやすいという特徴もあります。食品の開発では消費者に受け入れられることも重要ですが、長年発酵食品に使われている麹菌は日本人になじみ深い素材といえます。
培養する培地の種類や培養日数、肉として成形するためのつなぎによって出来上がった麹菌肉の食感や味が異なるため、さまざまなバリエーションが可能です。新しいタンパク源として食卓に並ぶ日も近いかもしれません。

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筑波大学 生命環境学群 生物資源学類 環境工学コース 准教授 粉川 美踏 先生

筑波大学 生命環境学群 生物資源学類 環境工学コース 准教授 粉川 美踏 先生

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農業環境工学、農業情報工学

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メッセージ

今、何をやりたいかがわからなくても、それを恥じる必要はありません。「〇〇学部でないといけない」というように決めてしまわずに、とりあえず「嫌いじゃない」くらいの気持ちで選んで進めば、何かが開けてくると思います。もし合わなければ、進路を変えればよいのです。かくいう私も最初は建築学科に入りましたが、やはり合わないと感じ、もともと食に興味があったことから農学部の食品工学が学べる学科に移りました。柔軟な心構えで、少しでも面白いと感じるところに進んでみるとよいでしょう。

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