光の活用が、これからの新しい技術のカギになる
近赤外光を使った新技術を開発
光は未知の可能性を秘めています。私たちが見ることができる可視光は、光の中のほんの一部です。目に見えない光はさまざまな特性を持っており、そのひとつに赤よりも波長が長い「近赤外光」という光があります。近赤外光を使うことで、これまで判別できなかった食品や商品などに混入している異物を発見する技術が開発され、現在はメーカーの生産ラインで実際に活用する段階まできています。
異物を光で検知する仕組みとは
従来の食品や商品の異物検査は、金属探知機やX線、人による目視で行われてきました。金属探知機やX線では、金属は発見できますが、毛髪や爪、虫といった有機物は検知できません。近赤外光を使えば、それらの異物を形として検知することができます。具体的には、映画館などの3Dメガネでも使われている偏光フィルターを利用します。偏光板は一定方向に細かなすき間があり、これを使って特定の方向に振動する光に整えます。2枚の偏光板に対象の商品を挟むようにして近赤外光を当ててカメラで撮影し、さらに偏光板の向きを変えて撮影します。加えて、2回の撮影した画像を加工・修正することで、混入物の形を鮮明に確認できるようになります。
研究次第で光による新技術が生まれる
近赤外光を異物検知に利用するのは、この光の波長が水の影響を受けにくいという特性を持っているからです。通常、食品は水分を多く含むため、これまでの技術では検知が難しいですが、この光を用いれば異物を検知することができるのです。このほかにも、脳の検査などにも利用されています。さらに、発見した異物が何なのか、人工知能(AI)を使って判断するプログラムの開発も進められています。
このように、光にはそれぞれ特性があり、それを活用することで新しい技術を誕生させることができます。目に見えない光には、非常に波長が短い深紫外光や波長が長い赤外光、さらに波長が長いテラヘルツ波などがあります。これらの光のポテンシャルは未知数で、どう活用するかはこれからの研究次第なのです。
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徳島大学 理工学部 理工学科 光システムコース 准教授 山口 堅三 先生
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