講義No.11436 数学

数学研究は登山と同じ? 過程をひもとく数学はおもしろい!

数学研究は登山と同じ? 過程をひもとく数学はおもしろい!

懸賞金もかけられた未解決問題

「コラッツの問題」というのを聞いたことがありますか? 整数nが奇数なら3をかけて1を足す、偶数なら2で割る、これを繰り返す、というルールのもと計算をしていきます。例えば7から始めた場合、「7×3+1=22、22÷2=11、11×3+1=34」と続きます。どのような数から計算を始めても、最後は答えが1になるとコラッツの問題では考えられています。しかしコラッツの問題が成立しない数が、どこかに存在しているかもしれません。1億2000万円の懸賞金をかける企業もあるほど、すべての数字に対する証明が困難な未解決問題なのです。

公理への道のりを探る数学研究

先ほど紹介したコラッツの問題のような数学の予想は、誰かが山頂から撮った写真のようなもので、そこに至るための道は見えません。そんな予想に対して数学の研究者たちは証明や反論をくり返し試み、ふもとから山頂までを自分で登ろうとしています。コラッツの問題の場合は、約100兆までの数について計算が完了し、そこまでは答えが最後に1になることが確認されました。ほかにもアキレスが亀を一生追い越せないという「アキレスと亀」問題を解説するときにも使われる「イプシロンデルタ論法」など、数学の道を歩むための新しい手法が現代においても発見されています。

無限はなぜ難しい?

単純な四則演算も、まだまだ議論の余地があります。数に限りがない無限集合の場合、有限集合で成立していた「2+3=3+2」のような数式が通用するかどうかわからなくなるからです。例えば「無限+1」の答えは無限ですが、「無限+2」の解も無限になります。つまり無限集合の世界ではすべての数が等しいのです。さらに方程式として「無限×2=無限×1」を誤って無限で割ってしまうと、「2=1」というおかしな式が得られてしまいます。数学分野では、常識はずれな無限集合について正確に考えるための方法の発見や、「そもそも数とは何か」に迫るための研究などが行われています。

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先生情報 / 大学情報

広島大学 理学部 数学科 教授 木村 俊一 先生

広島大学 理学部 数学科 教授 木村 俊一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

数学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学の数学では、高校までは「こういうものだ」と許容されていた課題や疑問に踏み込んでいきます。するとこれまで解けなかった問題がどんどん解けるようになるはずです。数学の背景についても議論できるので、中学や高校で習った内容を真の意味でおもしろく感じる瞬間があると思います。
また、英語に不安を感じているなら、興味を持ったテーマに結びつけて勉強するといいかもしれません。大学では英語で理系分野を理解したり発表したりする機会もあるので、自分の興味を深める手段として外国語を習得できると思います。

先生への質問

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広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、4研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。