数学研究は登山と同じ? 過程をひもとく数学はおもしろい!
懸賞金もかけられた未解決問題
「コラッツの問題」というのを聞いたことがありますか? 整数nが奇数なら3をかけて1を足す、偶数なら2で割る、これを繰り返す、というルールのもと計算をしていきます。例えば7から始めた場合、「7×3+1=22、22÷2=11、11×3+1=34」と続きます。どのような数から計算を始めても、最後は答えが1になるとコラッツの問題では考えられています。しかしコラッツの問題が成立しない数が、どこかに存在しているかもしれません。1億2000万円の懸賞金をかける企業もあるほど、すべての数字に対する証明が困難な未解決問題なのです。
公理への道のりを探る数学研究
先ほど紹介したコラッツの問題のような数学の予想は、誰かが山頂から撮った写真のようなもので、そこに至るための道は見えません。そんな予想に対して数学の研究者たちは証明や反論をくり返し試み、ふもとから山頂までを自分で登ろうとしています。コラッツの問題の場合は、約100兆までの数について計算が完了し、そこまでは答えが最後に1になることが確認されました。ほかにもアキレスが亀を一生追い越せないという「アキレスと亀」問題を解説するときにも使われる「イプシロンデルタ論法」など、数学の道を歩むための新しい手法が現代においても発見されています。
無限はなぜ難しい?
単純な四則演算も、まだまだ議論の余地があります。数に限りがない無限集合の場合、有限集合で成立していた「2+3=3+2」のような数式が通用するかどうかわからなくなるからです。例えば「無限+1」の答えは無限ですが、「無限+2」の解も無限になります。つまり無限集合の世界ではすべての数が等しいのです。さらに方程式として「無限×2=無限×1」を誤って無限で割ってしまうと、「2=1」というおかしな式が得られてしまいます。数学分野では、常識はずれな無限集合について正確に考えるための方法の発見や、「そもそも数とは何か」に迫るための研究などが行われています。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 理学部 数学科 教授 木村 俊一 先生
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