数学を用いて工学の進歩の一翼を担う
自然科学にとっての数学
「ある特定の場所でどんな波が観測できるか」「ある状況下で10秒後に何が起こるか」など、限られた情報から多くの結論・結果が得られるのは、自然科学の大きな魅力と言えるでしょう。エネルギー保存則などさまざまな分野の法則類とともに、それを助けてくれるのが数学です。例えば近年の自動車業界では、EV(電気自動車)化とともに自動運転が大きなテーマになっています。その実現に向け、赤外線を照射して戻ってきたものを検知することで、ほかの車両や障害物の有無、そこまでの距離などを把握します。その過程で数学が活躍しています。
新型コロナウイルス問題も解決に導く
別の具体的な例を挙げましょう。2020年以降、人類は新型コロナウイルス(Covid19)に苦しめられています。有効なワクチンや治療薬の開発もさることながら、いかに速やかにウイルスの存在を検知して感染を抑止するかが極めて重要です。その観点から進行中なのが、建物を清掃した後のバケツの水などを分析するという一見地味な方法です。ただし、バケツ一杯から水を数滴ずつ抽出して顕微鏡で見る作業を繰り返すのは効率的とは言えません。ある部分は機械化し、ある部分はAI(人工知能)による画像分析を用いることで自動化が進められています。現在の新型コロナウイルス以降に登場するであろう、新たなウイルスや食中毒を起こす菌類の検出にも役立てられるはずです。
めざすは「社会に貢献できる数学」
ウイルスの検出では自動化・効率化がテーマでしたが、数学の適用可能領域はそれにとどまりません。原子力発電所には放射性物質が流れる配管がありますが、その劣化状況を高い精度で求める数理モデルの開発なども進行中です。配管を実際に切断すると放射性物質が飛散してしまうので、配管を叩いた音を聞いて(非破壊で)中の様子を調べようという試みです。机の上だけでなく、物質の研究やモノづくりの現場でも数学は役に立てるのです。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 工学部 機械数理工学科 教授 北 直泰 先生
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