長屋が未来をつくる 大阪の暮らしを再生する建築デザイン

長屋が未来をつくる 大阪の暮らしを再生する建築デザイン

大阪に広がっていた長屋

かつて大阪には「大大阪時代」と呼ばれる時期がありました。大正末期から昭和初期にかけて、大阪は日本で一番大きな都市となり、多くの人が活気ある暮らしを送っていたのです。その時代に約98%もの大阪市民の住まいとなっていたのが「長屋」と呼ばれる住宅です。長屋とは、戸建てのように一軒ずつ独立しているのではなく、細長い家屋が一世帯ごとに壁で仕切られたものです。現在も市内の一部には長屋が残っていますが、過去20年では1日あたり約7軒が取り壊されており、急速に姿を消しつつある状況です。歴史や暮らしの記憶が詰まった長屋をどう残していくかが、大きな課題になっています。

長屋のリノベーション

長屋は築年数が古いため、音が漏れやすい、断熱性や耐震性が低い、便所が和式で風呂がないなど、現代の暮らしに合わない点も多くあります。しかし、都市にありながら前庭や裏庭があるなど、マンションにはない魅力もあります。そこで、古い木造の骨組みや味わいを生かしつつ、リノベーションによって長屋を現代的な住宅や店舗へと再生する取り組みが進められています。木造建築は補強や改修がしやすいため、現代の技術やデザインの力で安全かつ快適な空間に生まれ変わらせることができます。資材価格の高騰が続く今、新築ではなく既存の建物を活用することは、環境に配慮した持続可能な選択肢としても注目されています。

これからのデザインのあり方

ただし、例えば5軒つながった長屋を再生する場合、すべて同じ間取りやデザインにしてしまうと、将来的に一斉に時代遅れになってしまう恐れがあります。だからこそ、それぞれに違った設計を施して、多様なライフスタイルに対応できる工夫がなされています。古いものを生かして新しい価値を生み出すことは、これからの建築デザインにとって大切な視点です。そこにある歴史や環境に向き合いながら、次の時代へとつないでいくような建築のあり方こそ、未来をつくる力になるのです。

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先生情報 / 大学情報

畿央大学 健康工学部 建築デザイン学科(仮称)※2026年4月開設予定(設置認可申請中)(現:人間環境デザイン学科) 講師 吉永 規夫 先生

畿央大学健康工学部 建築デザイン学科(仮称)※2026年4月開設予定(設置認可申請中)(現:人間環境デザイン学科) 講師吉永 規夫 先生

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建築設計学、リノベーション、建築学

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メッセージ

建築は「衣食住」の中の「住」を支える、私たちの生活に欠かせない存在です。通学や日常生活の中でも、私たちはさまざまな建築に囲まれて暮らしています。スマートフォンやSNSで建物の写真を見ることもできますが、実際にその場所に立ち、空間を体で感じることでしかわからない魅力があります。名建築かどうかに関係なく、自分にとって「居心地がいい」「なんとなく好き」と思える場所にたくさん出会ってほしいです。建築を言葉にするのは難しくても、そうした感覚はとても大切なものです。

先生への質問

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「健康」と「教育」分野のプロを育てる実学重視の大学です。多くの学生が人と関わる仕事を選び、資格・免許取得を目指していることから、大学全体がアットホームな雰囲気の中、学習に打ち込める環境となっています。人間の多面的な営みを科学的に理解し、社会における健康を学ぶ健康科学部では、学科の枠を越えてコラボレートした授業や実習でチーム医療を学べます。現代教育が抱える問題を解決できる力を養う教育学部では、教育実習以外に学校インターンシップなどの実践の場を多く用意しています。