魚の感染症を防がないと、食卓から魚料理が消えるかも!?
人間と同じように魚も「感染症」にかかる?
人間と同じように、魚類にも病原体(ウイルスや細菌など)による感染症があります。幸い、感染症にかかっている魚を触ったり食べたりしても人間に健康被害が出る心配はありません。しかし魚の生存率が大幅に低下するため、多額のコストをかけている養殖事業者にとっては死活問題です。特に日本の場合、水産物の生産量全体に占める養殖の比率が年々高まっているので、養殖魚の感染症を防ぐ方法の確立を急がなければならないのです。
どうやって感染が広まるの?
水槽やいけすの中で、ふ化したばかりの稚魚を食用サイズになるまで育てる「養殖」以外に、稚魚がある程度まで育ったら海に放流し、大きく育ったものを漁獲する「水産増殖」の取組みも、国内各地で行われています。いずれの場合も、河川水や海水を飼育に用いたり、いけすそのものを海中に設置したりするのですが、飼育環境にウイルスや細菌が紛れ込んでいると感染症が発生します。すでに感染症にかかっている親魚から卵に垂直感染するケース、感染した野生の魚がいけすに侵入し、感染症をうつすケースなどもあります。これらの感染源を特定し、養殖魚を感染症から守る方法を研究するのが、「魚病学」という学問領域です。
魚病学が、日本の魚と水産業を守る
日本では、計24種の魚類・甲殻類・貝類の感染症が「監視対象」に指定されています。加えて、監視対象外の感染症による被害も継続して発生しています。そこで、水槽に入れる海水を紫外線で殺菌処理したり、親魚の感染症検査を行ったりして、感染リスクの低減に取り組んでいます。ワクチンを注射したり、エサに混ぜたりして、免疫をつけさせる方法も実施されるようになりました。魚の種類は数え切れないほど多く、海水中のウイルスや細菌も次々と新種が発見されています。魚病学の研究に終わりはありません。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 水産学部 水産科学院/ 水産科学研究院 准教授 笠井 久会 先生
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