クジラはどうやって歌うのか?
クジラは水中で暮らす哺乳類
クジラは今から約5000万年前に陸上から海に進出し、水中で暮らすための進化を成し遂げた哺乳類です。水の中で生きるには体の形だけでなく、塩分耐性、体温保持、呼吸などの生理メカニズムも適応させなければなりません。クジラには進化の結果として獲得した独自の特徴があり、まだ解明されていない部分がたくさんあります。
音波で情報をキャッチする
海の中は光を通しにくく、水面下200mでは真っ暗です。そのため、イルカの仲間などが含まれるハクジラ類は自分が出す音の反響を捕えることで水中の様子を察知することができるように進化しました。ヒゲクジラ類も音を出しますが、ハクジラ類と比べると、こちらはかなり低周波です。高周波の方が解像度は高くなり、小さな魚もはっきりととらえることができますが、低周波は広い範囲を見ることができます。ひょっとするとヒゲクジラ類は音を使って上空から地面を見下ろすように、海底の起伏などを“見て”周囲の様子を知ることができるのかもしれません。
クジラが音を出す仕組み
クジラは水中でさまざまな音を出すことは知られていますが、クジラには人間のような声帯はありません。ハクジラ類は鼻の奥にある弁のようなものを振動させて音を出しますが、ヒゲクジラ類にはハクジラ類のような器官も見当たらず、どうやって音を出しているか謎でした。最近になって、ヒゲクジラ類の喉にある袋状の器官が、どうやら音を発生させることに関わっている可能性が示されました。この器官の大きさと周りの筋肉量を詳しく調査したところ、メスより性成熟したオスの方が圧倒的に発達していることがわかりました。クジラは繁殖期にオスがよく鳴くことから、この器官が音を出していることが支持されたのです。クジラは私達と同じ哺乳類ですが、まだ知られていない多くの不思議があります。これからも、クジラの体の形から彼らの生きざまに迫っていく研究などが求められています。
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東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 助教 中村 玄 先生
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