日本語の獲得と英語の習得 人の言語機能に隠された不思議

日本語の獲得と英語の習得 人の言語機能に隠された不思議

生まれたばかりの頃はどんな言語も簡単?

人間は、生まれたばかりの頃は、どんな言語であっても、人間の言語(自然言語)ならば獲得できます。幼児期に接する言葉は、質・量ともに貧弱で偏りがあるにも関わらず、ごく短期間に、その言語の文法を獲得していきます。獲得される文法は、接した言語データからだけでは説明できない豊かなものです。これは人間の脳内にある言語機能が働いているため、と考えられています。

言語獲得の不思議

「猫がネズミを追いかける」と「ネズミが猫に追いかけられる」は同じ状況を表していますが、3歳頃の子どもは、前者は理解できても後者の文理解は難しく、これが5~6歳になると、育ちの環境等に関わらず一律に理解できるようになっていきます。
また、「太郎は花子に自分のバイオリンを渡した」と言うとき、「自分」が指すものは「太郎」ですが、「太郎は花子に自分のバイオリンを弾かせた」と言う時、「自分」が指すものは「太郎」とも「花子」とも解釈できます。日本語母語話者なら、誰に教えられることもなく、この事実を理解できます。
これらのような言語現象は、日本語に限らず、様々な自然言語で観察されます。一見、当たり前に思える物事の背後には、ある種のメカニズムが人間の脳の中で働いています。現代の言語学は、そのメカニズムがどのようになっているのかを探究しています。

違いを意識した英語教育

英語を習得する際の効果的な方法の一つに、母語(日本語)との相違点を意識して学ぶ方法があります。英語は日本語と違い、母音の数が日本語の5倍程度あり、母音と中心とした音のまとまりに強弱アクセントが付き、弱いところは、曖昧な音で発話されます。そして結論部が文末にくる日本語に対し、英語では、文の骨子(主-述部)が最初に送られてきます。これらの違いを意識してシャドーイング等の練習を行い、英語の感覚を身に付けることで、リスニングやスピーキング力を効果的に上げることが期待されています。

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筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者基礎教育研究部(視覚障害系) 講師 小林 ゆきの 先生

筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者基礎教育研究部(視覚障害系) 講師 小林 ゆきの 先生

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言語学、理論言語学

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