障がいのある子どもたちと「共に生きる」教育って?

障がいのある子どもたちと「共に生きる」教育って?

インクルーシブ教育という目標

インクルーシブ教育とは、障がいをはじめ、貧困、宗教、人種、言語、性別などの背景ゆえに社会のなかで周辺化されやすいマイノリティの子どもとそうではないマジョリティの子どもとが地域の学校で「共に学ぶ」ことをいいます。
2006年12月に採択された国連の障害者権利条約(日本は、2014年1月に批准)の中でもうたわれ、それを教育制度の改革理念とすることは世界的な潮流でもあります。ただし、インクルーシブ教育の学校現場への定着をはかるためには、制度レベルでの議論を超え出て、「日本の学校」の文脈の中で考えていく必要があります。

日本の学級と「変わったクラスメイト」

日本の通常の学級は、もともと「障がいのない日本人」の子どもを念頭に設計され、諸外国と比べても、「同質性」を維持しようとする力が強いといわれています。「同質性」の強い学級では、「異質性」を見せる「変わったクラスメイト」は目立ちやすく、彼(女)らはいじめや不登校に追いこまれやすい立場に置かれることになります。また、「学力競争」色の強い学級では、成績の振るわない子どもの「異質性」が目につきやすくなります。学級づくりや授業づくりのあり方は、インクルーシブ教育の日常化と密接に関係しているといえます。

特別支援教育の専門性の使いみち

近年、LD(学習障がい)、ADHD(注意欠陥・多動性障がい)、高機能自閉症・アスペルガー症候群などの発達障がいの可能性のある子どもが小・中学校の通常の学級に6.5%在籍しているとされ、すべての教師に特別支援教育の専門性を高めることが期待されています。
ただし、支援員・介助員の配置や抽出指導に依存した個別の「特別な支援」は、対象の子どもの「異質性」を学級の中で際立たせ、ほかの子どもたちにそれを意識させることと地続きです。「特別な支援」と「共に生きること」が矛盾しないように、個別の支援とセットで、同化や「同質性」の維持を脱皮したインクルーシブな学級づくり・授業づくりを試みていくことが大切なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

都留文科大学 教養学部 学校教育学科 准教授 堤 英俊 先生

都留文科大学 教養学部 学校教育学科 准教授 堤 英俊 先生

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教育学、特別支援教育

メッセージ

「共生」「共存」というスローガンをよく耳にしますが、障がい者と健常者が共に生きるために、私たち1人ひとりにいったい何ができるのでしょうか? このような問いに対して、教師をめざすあなたには、自らの地域生活のなかで障がい当事者の方々と「小さな関係」を持ちながら考えを深めていくことをおススメしたいと思います。
実は、学校現場における「特別支援教育」「インクルーシブ教育」を考えることは、地域や社会のあり方を考えることでもあるのです。ぜひ「障がい」「教育」を地域社会との関係の中で考えてみてください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

都留文科大学に関心を持ったあなたは

都留文科大学は、教員養成の大学として知られており、これまでに1万人以上の教員が全国の教育界で活躍しております。近年では企業・自治体への就職者も多く、優秀な人材を全国に輩出しております。2017年には、国際バカロレアを研究する「国際教育学科」を開設し、また、2018年には初等教育学科を従来の教員免許に加えて中学校数学・理科の免許も取得可能な「学校教育学科」に、社会学科を地域で活躍できるグローバルな人材を養成する「地域社会学科」に改編し、2学部6学科となり新たな歩みを始めました。