からくり人形の発想をロボット開発に生かす「機巧」の研究
ロボットの「動かし方」の仕組みを研究
ロボットは、モータの動力を歯車などで動かしたい場所に伝えて、その動きをセンサとコンピュータで細かく制御しています。例えば工場のロボットアームは、人間の腕のように複数の関節をモータで動かして、モノをセンサで見ながらつかんだり移動させたりという作業をします。
しかし、もっと人間の腕に似せて自由に動かそうとして関節の数を増やすと重くなって不安定になるため、現在では関節の数はせいぜい6~7個が限界です。そこで、こうした制約を解消しようと、歯車の形や部品の材料を工夫して、これまでにない動かし方の仕組みをつくり出す研究が行われています。
球形の歯車が人間の肩に似た動きを再現
その一つに、人間の肩関節のような動きをする球形の歯車があります。球の表面にメッシュ状の切り込みを入れて、そこにいろいろな形の歯車をかみ合わせて動力を伝えることで球を自由に回し、一つの関節で自由度の高い滑らかな動きができます。
また、電気を通すと水がにじみ出る材料を足先に使った、尺取虫型のロボットも開発されています。尺取虫は足を上げたり下ろしたりしながら接地面と足先の摩擦で前に進みますが、足を上げる代わりに水を出して摩擦をなくすことで、尺取虫と同じような動きが実現したのです。
からくり人形から受け継がれる発想
このように、動力伝達や動かし方に工夫を凝らした機械の仕組みを「機巧」と言います。江戸時代から続くからくり人形も、工夫を凝らした装置で複雑で繊細な動きを実現する機巧です。こうした日本特有の「緻密に考えて工夫する」という機械に対する発想が、ロボット開発にも必要とされています。
例えば保育や介護に利用するロボットは、子どもやお年寄りが突発的にぶつかったとしても安全に対応しなければなりません。しかし、ぶつかりを感知して動きを制御する早さには限界があります。こうしたロボットの限界を、制御ではなく新しい機巧や材料の開発によって突破できないかと研究が進められています。
参考資料
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 機械システム工学科 教授 多田隈 理一郎 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
ロボット工学、機械工学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?