江戸時代から続く学校不適応は、令和の時代でどう変わる?
日本の教育制度は「生活」が基本
ヨーロッパと日本との学校制度を比較すると、ヨーロッパは「学校は学問を学ぶ場所」という意味合いが強いため、日本のように児童・生徒が校内の掃除や給食当番を行うことはありません。対して日本は「学校は生活を通じて学ぶ場所」という意識が強いです。これは中世以降の日本において学びを行う場所が主に寺院だったことが関係しています。寺院での勉強は「修行」と言われ、勤行のほか掃除や食事などを総合した「学び」と考えられていました。この視座が明治以降の近代学校教育に承引され、日本では教員が授業に加えて生活や部活の指導も対応することが常態となっています。つまり学問と生活を総合した学校文化が日本教育の特徴なのです。
不登校は江戸時代からあった?
教育問題のひとつである「不登校」は年々割合が増加し、誰にでも起こりうる問題です。この不登校を歴史的に概観すると、古くは江戸時代でも似たような事例があることがわかります。かつて武家の子どもは「藩校」と呼ばれる学校に通うことが強制されていました。福山藩(現在の広島県東部)の藩校では「子どもが詰所までは来るが、授業に出ない。どういう躾を家庭で行っているのか申し開きせよ」と保護者が学校に呼び出され叱責されたエピソードが史料に残っています。つまり、今でいう「保健室登校」のようなものが当時にも存在していたのです。
学校と教師の役割が変わる?
リモート授業がさらに普及していくと、将来的には「不登校」という事象がなくなる可能性もあります。不登校といえば何か問題のある児童・生徒が陥るものだととらえられていましたが、今では裕福な家庭が高度な子どもの学習機会を用意し、学校の授業を一部選択するというハイブリッド・スクーリングも現れています。今後、学校は知識技術を学ぶ場から他者とのコミュニケーションを学ぶ場所へと役割が変化し、教師に求められる役割も勉強を教える「教師」から子どもの学びを支援する「指導員」へと変わっていくかもしれません。
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茨城大学 教育学部 学校教育教員養成課程 教授 佐藤 環 先生
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