新しい文学の世界 可視化されるジェンダーとセクシュアリティ
フェミニズム運動を支えた女性たち
18世紀末から19世紀にかけて、英国で産業革命が起こりました。以降、男性は社会的、女性は家庭的な生き物と、性で社会的な役割を分けられるようになりました。その結果、女性の権利回復を主張する「第一波フェミニズム運動」が起こります。そうした女性を支えるように、女性の作家や詩人たちは自らの境遇や心情を描いた文学作品を次々に生み出しました。人気や実力のあった女性も多く、イギリスの男性詩人のワーズワースは、ある女性詩人を「彼女のように詩が書けたら」と高く評価していたほどです。ところが時代を経て、文学の世界も男性優位になり、女性作家たちはいつの間にか埋もれていきました。
彼らに光を
特に1995年に中国で開催された「北京会議(第4回世界女性会議)」を機に、世界中でその運動や研究が加速しました。文学界では、作家の再評価という動きが起こります。「カノン」と呼ばれる権威的な文学作品には、男性上位で、男性に従う女性像が理想的と描かれているものもあり、それらが90年代の価値基準で再検証されました。さらに、埋もれていた女性作家や詩人たちの「発掘」も始まります。女性だけでなく性的少数派の作家や詩人にも光が当てられ、文学史の地図が塗り替えられる画期的な出来事でした。日本でも同様の作業が始まり、現在も続いています。
男女平等の次へ
北京会議の後、さらに世の中の価値観も大きく変わりました。発言することがタブーでさえあった男女平等、女性の働き方改革を世の中が受け入れ、「多様な性」に関する話題も真正面から取り上げられる時代になりました。ジェンダーやセクシュアリティは、今の若者に大変身近な問題です。男女の学校の制服の見直しも、その一端でしょう。私たちは、男性か女性かという二元論の時代を経て、人間としての多様なあり方がごく自然に受け入れられようとする時代を生きているのです。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 文学部 人文科学科(欧米文学研究室) 教授 瀬名波 栄潤 先生
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先生への質問
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