「こころ」は向こうからやってくる? 「バウムテスト」のしくみ
「こころ」には無限の可能性がある
「意識と無意識」を扱う学問領域は、臨床心理学の中でも深層心理学と呼ばれるもので、フロイトの始めた精神分析とユングの始めた分析心理学がベースになっています。例えていうと、意識とは海面上に見えている氷山の一角で、無意識とは海面下で見えない、どこまであるかわからないけれども「意識を支えている」ものです。意識は海面のように境界で無意識と分けられることによってその安定と秩序が維持されますが、一方で意識と無意識を合わせてこころの全体ですので、無意識の力はどうしても必要になります。ですから、意識と無意識を区切る境界をゆるめ、海面下に降りていって、無限の可能性がある無意識の力に触れんとするこころの旅は、治療的で創造的な可能性を秘めているといえるでしょう。
無意識が投影されるバウムテスト
「バウムテスト」という木の絵を描いてもらう心理テストがあります。無意識の内容やパーソナリティを映し出す投影法の一つで、西洋で生まれた手法ですが、あらゆるものに神様が宿るというアニミズム的な考え方が根づいている日本でも馴染みがよいようです。木が対象として選ばれるのには、姿形や成長することが人間に似ていることと、木のイメージが心や魂を象徴しているという二つの理由が考えられます。
「こころ」は向こうからやってくる?
投影projectionというと、プロジェクターのようにこちらからあちらに映し出すというイメージを持つかもしれません。しかし無意識は「私(意識)」にとってわからないものですから、外側にあり他者であるといえます。となるとバウムテストでは、白い紙に向かう「私」の働きかけに対して、いわば紙の向こうから無意識(こころ)が応えてやって来るということになります。バウムイメージは「私(意識)」と「心(無意識)」との出会いの場であり、対話の形そのものです。そして描き手はバウムを描くことを通じて内面を知ります。「私」はイメージを通じて向こう側の無意識やこころと出会い、新しい「私」になるのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸女学院大学 心理学部 心理学科(2024年4月開設) 准教授 鶴田 英也 先生
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