オランダはなぜスポーツ大国なのか? 欧州モデルをめざす日本
スポーツ教育の理想像は欧州にあり
文部科学省は、教育分野、スポーツ分野の両方で、ヨーロッパをモデルにヒントを得ながら政策を整える方針を打ち出しました。ヨーロッパにヒントを求める大きな理由の一つは、日本の「運動参加率」の低さという課題を解決するという目的があるからです。運動参加率とは、スポーツに対する意欲があり、週に1回以上スポーツをした人の割合のことで、国民の健康増進にかかわる指標になる数値でもあります。近年の調査で、日本における中学生の運動参加率が60%に満たないことが判明したのです。
4~5歳の9割がスポーツクラブに所属
一方でオランダでは100%に迫る割合で推移しており、4~5歳児の実に9割がなんらかのスポーツクラブに所属するなど、環境に大きな違いがあります。この差の背景にあるのがスポーツに対する考え方の違いです。日本では「競うもの」という風潮が強いのに対し、オランダでは「楽しむもの」というのが第一義にあるため、たとえ足が速くなくても、レギュラーになれなくても、ドロップアウトする人が少ないのです。「スポーツは友である」という考えが浸透しており、先生やコーチがそれぞれに合わせたレベルで指導をしていることもその助けとなっています。
両輪となる主体的な姿勢と環境の整備
さらに上をめざしたいという子どもには、競技用の育成プログラムや設備の整ったスポーツクラブといったソフト・ハードも用意されています。16歳を区切りに、競技者になりたいかどうかを自ら選ぶことで、主体的に取り組める環境が確立されているのも日本と異なる点です。国土が狭く、人口が少ないオランダが、世界で活躍する選手が多い理由は、多くの人がスポーツを続ける文化があり、それが素質のある子どもを開花させ、さらに競技力を高める政策があるからにほかなりません。日本もヨーロッパ諸国の制度や政策を参考にしながら、まずはスポーツを楽しむ文化の醸成を進めるという方向性を見定めています。
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大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科 教授 高橋 進 先生
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