講義No.12240 経済学

みんなで稼いだお金をどう分けあう?

みんなで稼いだお金をどう分けあう?

人々の「協力」を前提としたゲーム

複数の人が集まって、協力しながら事業を行ったとします。そこで生じた利益はどのように分配したら公平で不満が生じないでしょうか。例えば、単純に利益を等分したのでは、不満を覚える人がいるかもしれません。では、人によって配分する額を変えるとしたら、何を基準に決めるのが適切でしょうか。このように、状況に応じた最適な配分のルールについて考えるのが「協力ゲーム理論」です。

代表的な3つの配分の解

ここで仮に、1人で2万円を稼げるAさんと、1人で6万円稼げるBさんがいるとします。この2人が協力すると、それぞれの合計8万円よりも多くの10万円が稼げるとしましょう。この配分方法について、協力ゲーム理論では「コア」「シャープレイ値」「仁(ジン)」という3つの代表的な数学的解法があります。それぞれ重視するポイントが異なり、コアでは提携したメンバー全員が得をする「安定性」を求め、シャープレイ値ではそれぞれの「貢献度」を重視して計算します。そして、仁は「最大不満の最小化」といって、一番損をしている人たちの不満が最も少ないような分配の方法です。
例えばシャープレイ値は大雑把にいうと以下のような考え方です。Aさんのアイディアで2万円稼いでいたところにBさんが参加したならBさんは8万円の貢献を主張できます。逆にBさんが6万円稼いでいたアイディアにAさんが参加したなら4万円の貢献を主張できます。この2パターンの確率が2分の1とした場合、Aさんは3万円、Bさんは7万円という貢献度を導き出せます。

協力で人々は発展してきた

人類は人と協力することで1人ではできないような多くのものを生み出してきました。そこでは、関係を保っていくためにも成果の分け方が重要になります。協力ゲーム理論は、状況に応じた最適な配分方法を導くための経済学の理論として発展してきました。この学問は人々の持続的な協力関係を形成するのにも役立つでしょう。

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先生情報 / 大学情報

金沢大学 人間社会学域 経済学類 講師 髙梨 誠之 先生

金沢大学 人間社会学域 経済学類 講師 髙梨 誠之 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経済学、ミクロ経済学、ゲーム理論

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は普段、紙と鉛筆を使って理論を証明するための数式をひたすら解いています。数式と言っても、ゲーム理論は純粋数学とは異なり、パズルを解くような楽しみがあります。この分野は数学の知識のほかに、人間の社会的な事柄についての興味・関心が求められます。今起こっている世の中の動きや時事問題に対して、理論をどう役立てられるかを考える必要があるからです。例えば、新型コロナウイルスのワクチンの配布方法にもゲーム理論が使われています。私たちの生活を円滑に進めるために役立つ重要な技術の1つなのです。

先生への質問

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金沢大学に関心を持ったあなたは

金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。