みんなで稼いだお金をどう分けあう?
人々の「協力」を前提としたゲーム
複数の人が集まって、協力しながら事業を行ったとします。そこで生じた利益はどのように分配したら公平で不満が生じないでしょうか。例えば、単純に利益を等分したのでは、不満を覚える人がいるかもしれません。では、人によって配分する額を変えるとしたら、何を基準に決めるのが適切でしょうか。このように、状況に応じた最適な配分のルールについて考えるのが「協力ゲーム理論」です。
代表的な3つの配分の解
ここで仮に、1人で2万円を稼げるAさんと、1人で6万円稼げるBさんがいるとします。この2人が協力すると、それぞれの合計8万円よりも多くの10万円が稼げるとしましょう。この配分方法について、協力ゲーム理論では「コア」「シャープレイ値」「仁(ジン)」という3つの代表的な数学的解法があります。それぞれ重視するポイントが異なり、コアでは提携したメンバー全員が得をする「安定性」を求め、シャープレイ値ではそれぞれの「貢献度」を重視して計算します。そして、仁は「最大不満の最小化」といって、一番損をしている人たちの不満が最も少ないような分配の方法です。
例えばシャープレイ値は大雑把にいうと以下のような考え方です。Aさんのアイディアで2万円稼いでいたところにBさんが参加したならBさんは8万円の貢献を主張できます。逆にBさんが6万円稼いでいたアイディアにAさんが参加したなら4万円の貢献を主張できます。この2パターンの確率が2分の1とした場合、Aさんは3万円、Bさんは7万円という貢献度を導き出せます。
協力で人々は発展してきた
人類は人と協力することで1人ではできないような多くのものを生み出してきました。そこでは、関係を保っていくためにも成果の分け方が重要になります。協力ゲーム理論は、状況に応じた最適な配分方法を導くための経済学の理論として発展してきました。この学問は人々の持続的な協力関係を形成するのにも役立つでしょう。
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先生情報 / 大学情報
金沢大学 人間社会学域 経済学類 講師 髙梨 誠之 先生
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経済学、ミクロ経済学、ゲーム理論先生が目指すSDGs
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