地域住民と大学生が共に考え汗を流す 地域デザインのこれから
共感できる地域デザイン
能登半島にある石川県志賀町(しかまち)西海(さいかい)地区では、地域と大学が主体となる「コミュニティ・ベースド・ツーリズム」型として、廃校を拠点とした観光まちづくりが試みられています。廃校になった校舎を観光拠点に定め、地元で「幸せを呼ぶ」と伝わるさくら貝にスポットを当てたり、伝統舞踊「又次節(またじぶし)」を十数年ぶりに復活させたり、地域資源の魅力を再発見し、広くPRしています。廃校やさくら貝、又次節には、地元住民が抱く「信念」「価値」といったさまざまな思いが込められています。こうした概念を取り入れ、地域と大学、外部の人も共感しやすい地域デザインに取り組んでいる点が、この事例の特徴です。
関係人口を増やす
西海地区の廃校を拠点とした観光まちづくりには、地元の事業者や行政も参加しています。アメリカの社会学者グラノヴェターは、こうした緩やかなつながりの方が、家族や地元住民といった強いつながりに比べて価値ある情報の伝達やイノベーションを可能にするという「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」という理論を発表しました。この事例はこの理論を裏付けています。また廃校という拠点を得たことで、研究者や学生、関係者が集まりやすい環境が生まれ、まちづくりに関わる人の数が増えました。こうした定住者でも観光客でもない「関係人口」をいかに増やすかは、地域活性化における重要な課題です。
プロジェクトベースであること
高齢化や若者の流出に悩む地域にもそれぞれの独自性のある地域資源があるはずです。志賀町のケースではまちづくりに大学が参画することで、専門的な調査や学術理論に基づくノウハウが提供され、潜在的な地域資源にスポットが当たりました。しかし大学が単にアイデアを提案するだけでは、働き手・担い手不足に悩む地域への貢献という点では不十分です。学生や研究者が運営にも携わり、時には汗を流しながら実践を共にする、「プロジェクトベース」型の研究こそが、より多様で持続可能な地域をつくる上で求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
金沢大学 融合学域 観光デザイン学類 准教授 川澄 厚志 先生
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観光学、都市計画、まちづくり、地域経営論先生が目指すSDGs
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