おいしいお茶づくりはゲノム解析で!
お茶の味わい
お茶は、日本の食文化に欠かせない飲み物です。同じ緑茶でも、品種や生産地によって甘味、うま味、渋味、苦味のバランスが変わり、それぞれ異なる「味わい」を楽しめます。これは、お茶に含まれる成分量の違いによるものです。例えば、うま味の強いお茶にはテアニンといったアミノ酸が豊富に含まれています。一方、渋味や苦味に関連する成分であるカテキンは、強い抗酸化作用や殺菌・抗菌作用を持つため健康効果があるとされています。
ゲノムを読み解く
お茶に含まれる成分量の違いは、遺伝子の配列によってもたらされます。つまりお茶のゲノム情報を読み解くことで、実際に飲まなくても味わいを予想できると考えられます。そこで、まず既存の品種のゲノム情報を解析して、品種ごとのゲノム配列がデータ化されました。そしてこのゲノム配列から含まれるカテキンやテアニンなどの各成分量を導くことで、お茶の「味わいを予測」するAIが開発されました。これにより、お茶の品種改良において、お茶の葉を摘み取れる成木まで生育させなくても、発芽した際の小さな葉から味を判定できるようになったのです。お茶は生育が遅いため、これまで品種改良には30年程度の年月を要していましたが、この技術によって15年ほどに短縮できると試算されています。
温暖化でも育つ品種
品種改良のニーズはほかにもあります。お茶は春に暖かくなると新芽を出して成長しますが、新芽が出た後に寒くなって霜が降りると芽が凍結する凍霜害(とうそうがい)が発生します。これまでは4月だった芽吹きが温暖化によって3月に早まると、まだ霜の降りる日も多く、凍霜害の多発が懸念されています。そのため、芽吹きが遅い品種への改良などの対策が急がれています。
お茶以外のさまざまな農作物も、温暖化や気候変動による新たな病気や害虫の発生が予測されています。品種改良のスピードを速めるこの技術は、これからの持続可能な農業生産にとって非常に重要な研究なのです。
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