なぜ、人々はアメリカに移住するのか? 移民の視点から考える
多種多様なアメリカ人
アメリカはヨーロッパからの移民によって18世紀に建国されました。そして、それ以来、ヨーロッパをはじめ、アジアやアフリカなど、さまざまな国や地域から人々が大量に移住し、「アメリカ人」として暮らすようになりました。こうした歴史的な背景から、アメリカでは、さまざまな文化を持つ人々が一つの国の中で生活しています。一言で「アメリカ人」と言っても、多種多様なのです。
「エスニック・スタディーズ」とは?
建国以来、アメリカ社会で主流派として力を持ち続けてきたのは白人です。そのため、かつてのアメリカ移民研究は白人中心の視点であり、学問的な興味の対象も「多様な文化を持つ移民がどのように白人社会に順応していくのか」という点にありました。
しかし、そうした視点は、人種差別をなくそうという動きが活発になった1960年代から次第に見直されるようになります。そして、従来の研究に対抗する形で、マイノリティ(社会的少数派)である移民側の視点を重視する学問分野が登場しました。それが「エスニック・スタディーズ」です。
アメリカが自ら移民を生み出している!?
エスニック・スタディーズは、マイノリティの視点でマイノリティを研究する学問分野です。その研究成果は、移民に対する新しい理解を生み出しました。例えば、従来の研究では、移民を「政治・文化・経済的に遅れた貧しい地域から、先進的で豊かなアメリカに憧れてやって来た人々」だと考える傾向にありました。
一方、エスニック・スタディーズは、20世紀にアメリカが行ったアジア占領などの歴史的事実を踏まえ、これに反論します。すなわち、アメリカが強引に自分たちのシステムや価値観を他国に押し付ける姿勢こそが、その国の人々に「アメリカへの憧れ」や「政治的・経済的事情」など、アメリカ移住の動機を与えていることを指摘したのです。これにより、アメリカが自らの手で移民を生み出しているという新しい視点が移民研究にもたらされたのでした。
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先生情報 / 大学情報
日本女子大学 文学部 英文学科 准教授 土屋 智子 先生
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